「トラックを休ませた代償がこれですか?」 残業960時間規制で露呈した、物流が止まる“もう一つの現場”
EC拡大にともなう拠点処理能力の限界

背景にあるのは、EC市場の急成長だ。日本の物販系ECは2023年に14.6兆円に達し、宅配便の数は年間約50億個にのぼる。この膨大な数字は、単に荷物が増えただけでなく、情報の複雑化が現場を圧迫している実態を物語っている。
多種多様な品物を小口かつ短納期で動かす仕組みは、倉庫内での仕分けや判断の場面を激増させた。物流の重心は、移動効率から、仕分けや積み下ろしが重なる「拠点内でのさばき方」へと確実に入れ替わりつつある。
トラックの課題が走行効率にあるのに対し、拠点の課題は処理能力にある。短時間で大量にさばき、丁寧に梱包する作業は、いまだに現場の目と手に頼り切っているのが現実だ。即座に動ける柔軟性は、現場で働く人たちの無理によって支えられている。
機械化が難しいこの泥臭い領域こそが、いまや物流全体の流れを左右する場所となっているのだ。
自動化は有力な手段であり、無人搬送車(AGV)や自律走行ロボット(AMR)の導入は進んでいる。だが、多品種・高頻度の配送が求められる日本の物流では、高額な設備投資に見合う成果を得にくいという現実が横たわっている。
定型作業をこなす機械ほど急な変動には弱く、一度据え付ければ仕様変更も難しい。一方でドライバーの規制により荷着時間は不規則化しており、こうした変化への対応は結局現場の判断に委ねられる。機械と人の速度差を埋めるために、人間が追い込まれる事態も起きている。
滞りを防ぐには、荷主と運ぶ側が協力し、パレットなどの荷姿を標準化していくことが欠かせない。アマゾンは商品棚が自ら人のもとへ移動する仕組みで現場を一変させたが、国内の最新拠点でもロボットが人の負担を肩代わりし、効率を底上げする動きが進んでいる。
こうした変化を不動産の側から支える動きも目立ってきた。日本GLPや三井不動産は、単に場所を貸すだけでなく、働く環境の整備や作業の可視化など、現場運営の高度化に力を注いでいる。
三井不動産を例にとれば、2025年時点で国内外に78の施設を構え、投下資本は約1.3兆円にのぼる。彼らはもはや、倉庫を単なる入れ物ではなく、物流という流れのつなぎ目を根底から支えるインフラとして捉え直している。