「手取りが減っても、辞められません」 6割のドライバーが直面する、「荷待ち改善」「収入減」が同時に進む物流現場の矛盾
荷待ち改善と新たな負担

荷待ち時間は改善へと向かっているが、代わって現場の重い負担として浮上したのが「待機場所を見つけるのが困難(61.7%)」という悩みだ。次いで「給与が労働に見合わない(53.8%)」、「付帯作業(荷下ろし・積み込み等)(41.1%)」が続いている。この結果が物語るのは、問題が
「形を変えて潜伏している」
という事実だ。荷主の敷地内から待機車両が掃き出されたことで、そのしわ寄せは公道をはじめとする外部空間へと押し出された。数値上の記録は良化したかもしれないが、働き手は今、
・車をどこに止めるべきかという不安
・周囲への気配りといった新たな心労
を背負わされている。効率化の波が拠点の外側へと波及し、ドライバー個人の肩に重くのしかかっている。
なぜ賃金が上がらず下落に転じるケースすらあるなかで、6割以上(「続けたい」31.9%、「できれば続けたい」33.5%)もの人々が仕事を続けたいと答えるのだろうか。
この意向は、現状への満足というよりは、今の条件に縛られたなかでの「現実的な選択」と見るべきだろう。本調査の属性を見ると、年齢層は50代が39.5%と最も多く、ドライバー歴10年以上のベテランが68.3%に達している。こうした中高年の熟練層が中心である実態を考えれば、身体への負荷が軽くなったことで、いくらかの減収であれば許容できると考える層は一定数存在する。
加えて、ドライバーとして培った技能は他業種への転用が利きにくく、職を変えることへの心理的な障壁も無視できない。積み重ねてきた経験を手放すリスクを考えれば、今の仕事を続けることが生活を守るための、いわば消極的な最適解になりやすい。
現場の人間が無理をしてハンドルを握り続けることで、荷主側に
「今の待遇でも物流は止まらない」
という楽観的な見方を与えてしまいかねない。働き手の強い責任感が、図らずも過酷な環境を温存させる一因となっている面は否めない。現場が辛うじて持ちこたえているために、構造を根本から見直す機会が先送りにされており、この危うい均衡は働き手の忍耐によって保たれている。
稼げる姿へと作り替えるための道筋は明白だ。運賃への適切な転嫁や、積み下ろしといった付帯作業への対価の支払い、そして荷主側の受け入れ態勢を整える適正取引の徹底である。ただし、ここには利益と負担が激しくぶつかり合う板挟みが待ち構えている。運賃を引き上げれば荷主の出費は増え、そのコストは最終的に店頭価格へと反映されるだろう。働き手の収入を守る決断は、社会全体で物価の上昇を引き受ける覚悟を持つことと同義なのだ。
一方で、価格転嫁を拒み続けた先に待つ未来はさらに険しい。現場の収入は底を突き、担い手は去り、やがて物が運べなくなる事態が現実のものとなる。いまは燃料費の高騰や残業代の減少による痛みを、働き手が自らの生活を切り詰めることで補い輸送網をかろうじて維持している。こうした自己犠牲に頼るやり方はすでに限界を迎えており、その重みを誰が引き受けるのかという問いに正面から向き合う時を迎えている。