「大きいEVはもういらない」 BYDとボルボが狙う、全長4.3mという最適解
中国勢のコンパクトSUV戦略

都市のあり方や日々の暮らし、そして充電インフラの整備状況を重ね合わせれば、EVがSUVへと収斂していくのは極めて自然な流れといえる。では、
・日本
・欧州
・中国
という三つの巨大市場で、メーカー各社はいかにして生き残りを図ろうとしているのか。具体的な顔ぶれから、その戦略を読み解いてみたい。
中国のコンパクトSUV(EV)において、いま最も外せない存在がBYDの「ATTO 3」だろう。2022年2月に本国で産声を上げたこのモデルは、瞬く間にオーストラリアやタイといったアジア太平洋地域へと版図を広げた。2022年末までのわずかな期間で世界累計販売20万台を突破したという事実は、このサイズのSUVが国境を越えて求められている証左でもある。
BYDの強みは、何よりその出自である電池技術にある。独自のブレードバッテリーを心臓部に据え、約485kmという十分な航続距離を確保した。それだけではない。予測緊急ブレーキや全周囲カメラなど、守りの機能にも抜かりはない。
ATTO 3を眺めて気づくのは、中国のメーカーが車を移動の道具とは見なしていないことだ。車内の中央に鎮座する大型モニターに象徴されるように、彼らが重視するのは「車内での体験」そのものである。
圧倒的なコスト競争力を武器に、彼らは若い世代のライフスタイルに滑り込む。車は、もはや通信機能を備えた巨大なモバイル端末に近い。スマホと連動したアプリ操作や遠隔での空調管理など、日常の延長線上でいかにストレスなく使いこなせるか。その利便性とSUVらしい使い勝手を掛け合わせた点に、中国勢の真の強さがある。
対する欧米勢で、いま最も注目を集めているのがボルボの「EX30」だ。同社史上、最もコンパクトなフルEVとして誕生したこのSUVは、全長を約4235mm、全幅を約1835mmに抑え込んでいる。日本の都市部に多い機械式立体駐車場への入庫を明確に意識したサイズ設定だ。
2023年11月に国内投入されるや、400万円台からという価格設定も相まって、これまでにない身近なボルボとして受け入れられた。2024年3月には月間523台の販売を記録するなど、上級EV市場においても確かな足跡を残している。
走行距離は、最も身近なモデルで390km、上位モデルでは500km超を誇る。平日の通勤から週末の遠出まで、この一台で完結できる絶妙なバランスが支持の背景にある。
一方、テスラもまた、全長4280mm程度を見込む低価格なコンパクトSUV(EV)の開発に動いているとささやかれる。ボルボやテスラといったブランドが目指すのは、車体を小さくまとめつつも、内装の質感やデザインで所有する喜びを損なわない、新しいプレミアムの形だろう。彼らはその高い知名度を背負い、これまでEVに手を伸ばさなかった層へ、一気に攻勢をかける構えだ。