「大きいEVはもういらない」 BYDとボルボが狙う、全長4.3mという最適解

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航続距離神話が揺らぐ中、EV市場は転機を迎えた。都市生活者の実走行は1日5~20km、国内充電網も約2.8万拠点へ拡大。全長4.3m級のコンパクトSUV(EV)が現実解として浮上し、勝敗はソフトと体験価値へ移りつつある。

実走行距離の実態

EX30(画像:ボルボ・カーズ)
EX30(画像:ボルボ・カーズ)

 では、肝心の航続距離はどう考えるべきか。国土交通省の統計や政府の自動車燃料消費量調査といったデータを紐解くと、私たちの移動の実態が浮かび上がってくる。

 結論からいえば、都市生活者が自家用車を走らせる距離は、1日平均でわずか5~20km程度にすぎない。車は決して毎日長距離を走る道具ではなく、週末の買い物や近場への外出を支える

「補助の足」

としての役割が色濃いのが現実だ。例えば、東京都内の標準的な世帯では、1週間の走行距離は約20km、年間でも3000kmに満たない。1日あたりに直せば約8kmという計算になり、しかもその利用は週末に集中している。

 こうした「たまに、短く乗る」という使い道を前提に置けば、コンパクトSUV(EV)が備える200~300kmの一充電走行距離は、決して不足ではない。むしろ、日々の暮らしには過不足のない、極めて現実的な水準といえるだろう。

 筆者(近澤眞吉、モータージャーナリスト)が長くEVの動向を追うなかで見てきたのは、「EVは非力で走れない」という根強い偏見に抗う現場の苦悩だった。少しでも長く走れることを証明するために、電池を限界まで積み増す必要に迫られてきたのだ。電池の積み過ぎが価格を跳ね上げ、車重を増やして道路に負担をかけると知りながら、その流れを止められなかった側面がある。

 しかし、ようやく風向きが変わった。電池技術の進展により、コストを抑えた使い勝手の良いモデルが、費用対効果の面でも納得感のある選択肢として受け入れられ始めている。

 インフラ側の変化も見逃せない。公共の充電設備は着実にその裾野を広げている。経済産業省のデータによれば、国内の充電スタンドは2025年末時点で約2.8万拠点に達し、今も月に数百のペースで増え続けている。マンションや商業施設への導入を担う事業者の動きも活発だ。

 先行する中国の勢いはさらに凄まじい。国家エネルギー局の発表では、2025年末の充電設備は2000万基の大台を超えた。特筆すべきは、1500万基以上を占める個人用設備の充実ぶりであり、家庭での充電が当たり前の風景になりつつある。欧州に目を向けても、オランダ、ドイツ、フランスを中心に、地域全体で網の目のような整備が続く。

「必要なときに、必要な分だけ充電する」

というスタイルが定着すれば、重く巨大な電池を常に抱えて走る理由はもはや見当たらない。電池という制約から解き放たれたことで、都市の暮らしに寄り添うEV-SUVの真価が、ようやく正当に評価される時代が来たようだ。

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