「ICカードは作りません」 JR四国が売上13億円で選んだ“持たない経営”の帰結、固定費モデルを捨てた鉄道会社の異端戦略とは
JR四国はICカード空白地帯を逆手に取り、スマホ決済「スマえき」で2024年度売上12.93億円(前年比2.5倍)、定期券3.4倍を記録。高速道路網の拡大で車依存が進む四国で、鉄道の生き残り策が問われる。
空白地帯の再評価

四国は交通系ICカードの空白地帯と目されてきたが、その実態はデジタル化の遅れを意味しない。むしろ、高額な設備投資を前提とするICカードの導入をあえて見送り、その一歩先にあるスマートフォン中心の決済基盤へ直接飛び越えた結果といえる。
スマえきの強みは、物理カードや自動改札機というハードの制約に縛られず、地域交通全体を統合するプラットフォームとして機能できる点にある。2024年度の販売実績が前年度比で2.5倍に膨らみ、なかでも定期券利用が3.4倍に達した事実は、この仕組みが地域住民の生活導線に深く浸透しつつあることを物語る。
独自の基盤を構築したことで、JR四国は利用者の移動データを自社で管理し、状況に応じた柔軟なサービスを打ち出す機動力を手に入れた。他社のインフラに依存するリスクを排し、自ら事業のかじを握るための布石とも読み取れる。
この仕組みがバスをはじめとする他の公共交通機関と結びつけば、四国全域をカバーするシームレスな移動網へと発展するだろう。物理的設備を最小限に留める「身軽さ」が、変化の激しい現代ではかえって強力な武器となるのではないか。維持費に喘ぐ全国の地方交通にとって、この四国の試みは、進むべき道筋を示すひとつの参照点となるはずだ。