「ICカードは作りません」 JR四国が売上13億円で選んだ“持たない経営”の帰結、固定費モデルを捨てた鉄道会社の異端戦略とは
JR四国はICカード空白地帯を逆手に取り、スマホ決済「スマえき」で2024年度売上12.93億円(前年比2.5倍)、定期券3.4倍を記録。高速道路網の拡大で車依存が進む四国で、鉄道の生き残り策が問われる。
高速道路網の拡大影響

1989(平成元)年に端を発した四国内の高速道路網の延伸は、JR四国の収益基盤を侵食し続ける構造的な足かせとなった。公表されたグラフを紐解けば、2000年時点での高速道路総延長は1989年の5倍超に達している。このインフラ整備に呼応するかのように、鉄道の輸送人キロは1990年代半ばを境に減少へ転じ、運輸収入もまた、その軌跡をなぞるように下降線を辿ってきた。
負の連鎖を決定づけたのは、高速道路の通行料金割引とリーマンショックの時期が重なったことだろう。生活者の意識が自家用車へと一段と傾斜し、自動車依存の社会構造が決定的なものとなったからだ。追い打ちをかけるように2020年の感染症流行が襲い、グラフが垂直に近い角度で落ち込むほどの衝撃が地方交通を直撃した。
こうした推移は、鉄道が提供してきた移動手段としての価値が、道路網の圧倒的な利便性に敗北し続けた歴史にほかならない。鉄道が再び存在感を示すためには、何が必要か。自動車におけるETCがそうであったように、利用者に支払いの手間を意識させないシームレスな体験を、デジタルの力で実装できるかがわかれ目となる。
鉄道をハードウェアとしてではなく、スマートフォンの上で切符の購入から乗車までが完結するソフトウェア的体験へと昇華させる。強固な道路網という競合に立ち向かうための最低条件は、もはやそこにある。