技能試験の合格率はわずか「6%」 それでも企業が「外国人ドライバー」の採用に1人200万円を投じる理由とは
利害関係者の交錯と今後の展望

物流の持続性をめぐる議論は、多くの利害関係者が交錯し、複雑さを増している。政府は経済成長の生命線である物流網の維持を至上命題とするが、事故発生時の政治的責任という重圧も背負う。自治体にとっても、地方の人手不足を補う好機であると同時に、生活環境整備という新たな負荷がのしかかる。
物流企業にとって、外国人ドライバーの成否は事業継続の分岐点にほかならない。しかし、ひとりあたり200万円にのぼる採用・育成コストは重く、ヤマトHD傘下の物流中堅・ナカノ商会(東京都江戸川区)が1日10件の依頼を断らざるを得ない状況に追い込まれるなど、収益機会の損失は深刻だ(『日本経済新聞』2026年2月12日付け)。
荷主であるメーカー側も、配送網の確保を自社の利益を守るための急務と捉えている。経済産業省の調査によれば、すでに荷主の1割が輸送を断られる事態に直面した。消費者は、利便性と引き換えに物流費上昇を受け入れるかどうかの瀬戸際に立たされ、投資家は人手不足解消への期待と制度変更のリスクを天秤にかけている。そして当事者である外国人ドライバーは、在留期間が5年に制限される枠組みの中で、日本でのキャリア形成という不確実な未来を描かなければならない。
最大の焦点は、安全性の担保と人材供給の両立にある。外免切替の合格率が1割未満となった現状は、事故防止には寄与するだろうが、現場への供給を絞り込む障壁となっている。
興味深いのは、現場の反応だ。調査によれば7割以上の企業が制度の厳格化を肯定している。前述のとおり、交通ルールの理解促進を期待する声が69.1%、事故リスクの低減を望む声が49.4%に達する事実は、安全への強い懸念を物語る。だが、その裏で37.5%の企業が採用難を恐れ、84%が人手不足を訴えている。安全と供給の間の深い課題は、いまだ埋まっていない。
こうしたなか、利害の対立を乗り越えようとする動きも芽生えている。サカイ引越センターの事例はその一端だ。接客は別のスタッフが担い、外国人は運転に特化させる。役割を分かつことで、日本語能力への不安を解消しながら戦力化を図る手法だ。現場の工夫によって、制度の壁を越える(『日本経済新聞』2026年1月25日付け)。こうした現実的な解法が、これからの物流を支える助けとなるのだろうか。
これからの経営に求められるのは、外国人を費用ではなく、投資の対象として捉える視点の転換だ。受け入れ費用も、特定技能1号の在留期間である5年間で按分すれば、年間40万円の資産維持費という計算になる。
大手が大規模採用を断行する背景には、人手不足による受託拒否という機会損失を食い止める狙いがある。実際、前述のナカノ商会では人員不足を理由に1日10件の依頼を断る事態も起きており、現場の窮状は隠しようがない。こうした損失を防ぐには、自社での教本作成や自動車学校の運営といった、人材を自前で育てる仕組みの構築が不可避となるだろう。