損失最大2.5兆円は再出発の代償か――収益モデル転換の現在地【短期連載】ホンダ「EV敗北論」という虚像(1)

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最終赤字6900億円、損失最大2.5兆円――ホンダの急変はEV投資の失敗で片付けられる話ではない。四輪の収益力とHV戦略の遅れ、そして次世代投資の重圧。数字が示す構造の揺らぎを読み解く。

市場後退と技術革新の非同期

ホンダのSDVが目指すデジタルUX(画像:本田技研工業)
ホンダのSDVが目指すデジタルUX(画像:本田技研工業)

 ホンダに限った話ではない。自動車各社は、EV需要の伸びが鈍る一方で、ソフトウェア定義車両(SDV)や自動運転、知能化といった次の技術に向き合わざるを得ない。市場の動きと技術の進み方に、わずかなずれが生じている。すぐに収益につながらない分野へ資金を振り向けるため、先行投資の負担はどうしても重くなる。

 世界でEVが伸びているのは中国だ。その中身は厳しい。現地メーカーが主導する形で価格競争が進み、採算は取りにくい。加えて、車内でのデジタル体験に対する期待は高く、開発の速さも求められる。ハードだけでは評価されにくい市場である。

 ホンダの2025年の中国販売は、前年比で約25%減となった。日本メーカーのなかで最も落ち込みが大きい。背景には、機械としての完成度を優先するあまり、現地の要望に合ったモデルをタイミングよく出せなかった点がある。この反省を踏まえ、提携先である東風汽車や広州汽車が主導する電動車の投入を検討し始めている。

 ゼネラルモーターズとの共同開発の解消も、意味はそれだけにとどまらない。他社と共通の基盤に依存したままでは、将来の競争力につながるソフトウェアの主導権を握れないという判断があったとみられる。自前に戻る選択は、短期的には財務の負担を増やす。それでも車両を制御する基盤を自らの手に収めようとする姿勢は明確だ。

 足元の収益を守りながら、長期の投資を続ける。言葉にすれば簡単だが、その両立は容易ではない。いまのホンダは、その難しさを正面から引き受けている段階にある。

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