損失最大2.5兆円は再出発の代償か――収益モデル転換の現在地【短期連載】ホンダ「EV敗北論」という虚像(1)

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最終赤字6900億円、損失最大2.5兆円――ホンダの急変はEV投資の失敗で片付けられる話ではない。四輪の収益力とHV戦略の遅れ、そして次世代投資の重圧。数字が示す構造の揺らぎを読み解く。

トヨタとの戦略的差

ホンダ・プレリュードHV(画像:米国ホンダ)
ホンダ・プレリュードHV(画像:米国ホンダ)

 電動化の進め方を見ると、複数の動力源を併用するトヨタ自動車の手法は一歩先を行く。北米を軸にHVを広げ、収益を積み上げている。2028年の世界生産は2026年比で1割増の1130万台を見込む。プラグインハイブリッド車を含むHVは670万台まで引き上げる計画だ。2026年計画比で3割増となり、HVの比率は6割に達する見通しである。収益源として重視する姿勢がうかがえる。

 強みは、世界のHV市場で50%を超えるシェアにある。1997(平成9)年の初代プリウスから約30年、技術と供給網を積み上げてきた。その積み重ねが規模の効果を引き出し、台数を増やすほど資金が厚くなる流れを生んでいる。すでに投資を回収した設備を活用し、得られた資金をEVやソフトウェアへ振り向ける。この循環が続いている。HVは過去の蓄積が生む収益源といえる。

 これに対し、ホンダの「2025ビジネスアップデート」は、2030年に四輪販売360万台以上、そのうちHVを220万台とする目標を掲げる。次世代HVの費用は2018年モデル比で50%以上、2023年モデル比で30%以上の低減を狙う。2027年からの4年間で13車種を投入し、需要の広がりを取り込む構えだ。

 ここには性質の違いがある。ホンダにとってのHV強化は、既存の基盤から収益を引き出す段階ではなく、

「これから資金を投じて積み上げていく段階」

に近い。利益が出るまでに時間がかかる。この差が、次の技術に振り向けられる余力の差として表れている。

 足元の苦しさは、技術そのものよりも、投資をどれだけ早く回収できるかという仕組みの違いに起因する部分が大きい。トヨタとの差は、まさにそこにあるのだ。

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