免許返納後の“足”になれるか? 「特定小型原付」が広げる時速20kmの新市場――生活道路と路地に生まれる新しい移動経済
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「16歳以上なら免許不要」。2023年に始まった特定小型原付の制度が、時速20kmの中速移動という新しい領域を道路に生んだ。市場は2034年に151億ドル規模へ拡大する見通し。若者や高齢者、物流や個人商売まで巻き込むマイクロモビリティの経済効果を追う。
移動が収入を生む手段になる可能性

2034年に151億ドルへ達すると見込まれるこの市場は、日本の社会のあり方にも影響を及ぼしうる規模に育ちつつある。年平均14.73%という高い成長率には、移動の形が変わるのではないかという期待がにじむ。
16歳以上であれば免許なしでも使える仕組みは、物流やサービス業で深刻になりつつある働き手不足の受け皿となりうる。これまで運転免許という壁に阻まれていた人びとが、労働の担い手として市場に加わる余地が広がるためだ。企業にとっても、人手の確保と費用の抑制を同時に進める手段になりうる。
四輪モデルや荷物を多く積める車両が広がれば、移動の意味も少し変わる。移動はこれまで出費として扱われがちだったが、収入を得るための道具にもなり得る。軽自動車ほどの初期費用をかけずに個人商売や効率的な配送を行えるようになれば、地方や都市のすみずみに小さな商機が生まれる可能性がある。車両価格の低さと維持費の軽さは、事業を始める際の敷居を下げ、新しい仕事の芽を生みやすくする。
もっとも、広がりには前提もある。車両を動かす電力の供給網や、故障に対応できる整備体制を整えることだ。自転車店や地域の工場がその役割を担えば、縮小していた地元の産業にも仕事が戻るかもしれない。
中速での移動が日常になる社会では、人の移動の自由と企業の効率的な運営が同時に成り立つ。結果として、日本全体の経済の底上げにもつながっていく可能性がある。