免許返納後の“足”になれるか? 「特定小型原付」が広げる時速20kmの新市場――生活道路と路地に生まれる新しい移動経済

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「16歳以上なら免許不要」。2023年に始まった特定小型原付の制度が、時速20kmの中速移動という新しい領域を道路に生んだ。市場は2034年に151億ドル規模へ拡大する見通し。若者や高齢者、物流や個人商売まで巻き込むマイクロモビリティの経済効果を追う。

広がる車両の種類と活用の場

特定小型原付(キックボード型、自転車・バイク型)における販売数の推移(画像:日本電動モビリティ推進協会)
特定小型原付(キックボード型、自転車・バイク型)における販売数の推移(画像:日本電動モビリティ推進協会)

 日本電動モビリティ推進協会の報告によると、特定小型原付の販売台数は2023年の5130台から1万855台へと増えた。

 また、IMARCグループが2025年12月に公表した調査では、日本のマイクロモビリティ市場は2025年に44億ドルに達したとされる。さらに2034年には151億ドル(約2兆4040億円)まで拡大し、2026年から2034年までの年平均成長率は14.73%になる見通しだ。こうした数字は、車両の販売だけでなく、周辺サービスも含めた市場全体が広がっていく可能性を示している。

 実際の市場を見ると、立って乗るキックボード型だけではない。

・重心が低く安定した「座り乗り」のモデル
・自転車に近い形の車両

も増えてきた。スズキが示したような荷物を多く積めるモデルが広がれば、使い道はさらに増える。軽自動車を改造して楽しむように、荷台を自分の好みに作り替える文化が根づけば、関連部品の需要も広がるだろう。地域の整備工場が点検や修理の拠点として動き始めれば、既存の産業にも新たな収入源が生まれる。

 ビジネスでの活用も見逃せない。都市部の配送では、小回りの利く移動手段としての役割が大きくなる。軽自動車では入りにくい場所での移動販売や、オフィス街での飲料販売といった使い方も現実味を帯びてきた。16歳以上であれば免許がなくても運転できるため、これまで原付バイクを扱えなかった人たちも働き手として参加できる。結果として、物流現場の人手不足を和らげると同時に、配送費の見直しにもつながる可能性がある。

 こうした動きを見ると、この制度は電動キックボードの普及だけを狙ったものではないことがわかる。新しいビジネスや働き方を支える土台となり、経済の動きを広げていく余地を持つ。法改正によって生まれたマイクロモビリティの姿は、すでにその輪郭を見せ始めている。

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