免許返納後の“足”になれるか? 「特定小型原付」が広げる時速20kmの新市場――生活道路と路地に生まれる新しい移動経済
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「16歳以上なら免許不要」。2023年に始まった特定小型原付の制度が、時速20kmの中速移動という新しい領域を道路に生んだ。市場は2034年に151億ドル規模へ拡大する見通し。若者や高齢者、物流や個人商売まで巻き込むマイクロモビリティの経済効果を追う。
免許不要が広げる利用者層

特定小型原付の制度導入で市場が広がりそうな理由は、「16歳以上なら免許なしで乗れる」という点にある。免許を持たない若者や高齢者でも使える移動手段が生まれたことで、これまで年齢ごとにわかれていた利用者層が、「免許を持たない人」というひとつの大きな集団として現れたからだ。
ソニー損害保険の調査では、2005(平成17)年4月2日から2006年4月1日生まれの20歳1000人のうち、運転免許を持つ人は51.3%にとどまった。ほぼ半数である。2023年の調査では61.2%だったため、およそ10ポイント下がったことになる。若い世代にとって車を持つ負担は重い。そうした状況のなかで、この制度は彼らの移動の需要を受け止める役割を担う可能性がある。
警視庁によると、2023年末時点で75歳以上の運転免許保有者は約728万人いる。MS&ADインターリスク総研が2024年に行った自動車運転者への調査では、免許返納を考えたことがある人のうち49.4%が70歳以上だった。実際には返納しなかった理由で最も多かったのは、
「他の移動手段が不便」
という回答で64.4%を占める。こうした数字から浮かぶのは、
「車の運転はできれば控えたいが、代わりの移動手段が足りない」
「便利な手段があれば使いたい」
という人が、世代を問わずいるという現実だろう。メーカー側から見れば、幅広い年齢層を同じ車両体系でカバーできる利点がある。開発費の負担は抑えやすい。家庭にとっても、車の維持費を減らせれば支出に余裕が生まれる。その分、ほかの消費に回る可能性もある。結果として、家計を通じた経済への広がりも見込まれるのだ。