免許返納後の“足”になれるか? 「特定小型原付」が広げる時速20kmの新市場――生活道路と路地に生まれる新しい移動経済
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「16歳以上なら免許不要」。2023年に始まった特定小型原付の制度が、時速20kmの中速移動という新しい領域を道路に生んだ。市場は2034年に151億ドル規模へ拡大する見通し。若者や高齢者、物流や個人商売まで巻き込むマイクロモビリティの経済効果を追う。
四輪型モビリティという新しい提案

特定小型原付は電動キックボードだけではない。スズキは、この新しい移動の枠組みにいち早く反応した。2023年のジャパンモビリティショーに出品された「SUZU-RIDE」と「SUZU-CARGO」は、電動キックボードの手軽さを持ちながら、転倒しにくい四輪の形を採用している。
「SUZU-RIDE」は、16歳の高校生から、ハンドル形電動車いすに抵抗のある高齢者まで、幅広い人が扱いやすい移動手段として提案された。シート一体型の荷台を備え、買い物や通院、通学といった日常の用事に対応する。これまでの福祉車両には「高齢者向け」という印象がつきまとっていたが、外観を現代的なものに変えることで、その心理的な抵抗を和らげた。身体機能を補うための乗り物というより、日常の移動の選択肢のひとつとして広げようとする狙いがうかがえる。
一方の「SUZU-CARGO」は、全長を伸ばして大きな荷台を持たせ、多くのバッテリーを積むことで長い距離の移動に対応する。広い荷台は遊びの用途だけでなく、仕事の場でも使いやすい。従来のハンドル形電動車いすは歩行者として扱われるため、最高速度は時速6kmに限られていた。歩行に不安のある人には適しているものの、もう少し行動範囲を広げたいという人の要望には十分応えきれていなかった。
「免許は返したいが、二輪車は転倒が怖い。とはいえ、いかにも高齢者向けの乗り物には乗りたくない」
こうした思いを持つ人にとって、四輪のモデルは受け入れやすい。
しかも車両価格は軽自動車より安く、維持費も自転車に近い水準に収まる。小規模な移動販売や個人事業の配送など、少ない元手で収入を得る活動にも向く。こうした車両が広がれば、地方都市や住宅地での経済活動の効率は大きく変わる可能性がある。