“純正ポップアップルーフ”はなぜ消えたのか? 「昔のマツダにはできて、今は無理なのか」――ボンゴフレンディが直面する現代の壁
1995年登場のマツダ・ボンゴフレンディは、電動で屋根を持ち上げるオートフリートップで量産ミニバンに新たな居住価値を提示した。1126.5億円に達した国内キャンピングカー市場の拡大と重なる先進的な発想は、現代の車中泊ブームにも通じる。
理想と現実の狭間

ボンゴフレンディが切り拓いたオートフリートップの系譜を辿ると、自動車産業が直面する理想と現実の差が浮き彫りになる。拡大し続けるキャンピングカー市場の熱量は、現代人がモビリティに対して移動以上の価値、すなわち「私的な空間の確保」を求めている証しだ。しかし、衝突安全基準の厳格化や製造原価の高騰、さらに電動化にともなう重量管理の厳しさが、かつてマツダが市販化した純正ルーフの復活を阻む高い壁となっている。
メーカーが効率的な大量生産に特化し、特殊なニーズを外部の架装業者へ委託する水平分業の構造は、経済合理性の観点から正解だ。だが、この構造が定着したことで、ベース車両のポテンシャルを極限まで引き出す大胆な発想は影を潜めた。純正ポップアップルーフが再び日の目を見るには、軽量な新素材の採用や、型式指定取得に見合う圧倒的な需要の顕在化が欠かせない。
ボンゴフレンディが30年前に示した「空間を立体的に広げる」という思想は、形を変えながら現代の車中泊ブームの底流に息づいている。物理的な屋根の開閉という手段が選ばれるかは不透明だが、限られた車体寸法のなかで居住性を最大化しようとする試みは、モビリティが生活の基盤となる未来において避けては通れない道だ。
かつての挑戦を回顧するだけでなく、その志を現代の技術でどう昇華させるか――それが、次の時代の「動く部屋」を世に送り出す最大の課題となるだろう。