“純正ポップアップルーフ”はなぜ消えたのか? 「昔のマツダにはできて、今は無理なのか」――ボンゴフレンディが直面する現代の壁
1995年登場のマツダ・ボンゴフレンディは、電動で屋根を持ち上げるオートフリートップで量産ミニバンに新たな居住価値を提示した。1126.5億円に達した国内キャンピングカー市場の拡大と重なる先進的な発想は、現代の車中泊ブームにも通じる。
空間効率という発想

マツダ・ボンゴフレンディのオートフリートップが示したのは、単体の豪華さではなく、
「限られた面積を立体的に活用する価値」
であった。当時の市場環境や安全基準の制約から主流化には至らなかったが、車内空間を状況に応じて広げるというテーマは、今後の車づくりでも重要性を増すだろう。
キャンピングカー市場は拡大を続けており、かつてはアウトドア志向の一部層に限られていた楽しみ方が、より幅広い層へと浸透している。クルマに居住機能や多用途性を求める志向は、一時的なレジャー需要にとどまらない。こうした変化を踏まえれば、屋根を持ち上げて空間を拡張する仕組みは、奇抜な発想ではなく、限られたボディサイズで居住性を高める合理的な解決策のひとつと評価できる。
自動車メーカーが純正の電動ポップアップルーフを短期的に復活させるかは不透明だ。しかし、車両の価値を移動手段から用途に応じて拡張できる方向へ広げる潮流は続いている。技術進歩により、カーボン素材を用いた軽量ルーフや高密度断熱材の採用が可能になれば、かつて課題とされた重量増や温度管理の問題も解消される見込みだ。
形式の復活の有無にかかわらず、限られたスペースをどう広げるかという発想は、今後の車づくりで検討され続けるテーマとなる。ボンゴフレンディが提示した立体的な空間活用の思想は、次世代モビリティの新しい居住体験のなかに、形を変えて受け継がれていくだろう。