“純正ポップアップルーフ”はなぜ消えたのか? 「昔のマツダにはできて、今は無理なのか」――ボンゴフレンディが直面する現代の壁
1995年登場のマツダ・ボンゴフレンディは、電動で屋根を持ち上げるオートフリートップで量産ミニバンに新たな居住価値を提示した。1126.5億円に達した国内キャンピングカー市場の拡大と重なる先進的な発想は、現代の車中泊ブームにも通じる。
技術的な課題

現行のミニバンやバンに純正装備として電動ポップアップルーフを組み込むには、技術面とコスト面の両方で大きなハードルがある。1990年代以降、衝突安全基準は段階的に強化され、とりわけキャビン保護の観点ではルーフ剛性が重視される。
開閉機構を組み込むポップアップルーフは、車体構造の制約が大きく、補強材やモーター類の追加による重量増も避けられない。その結果、燃費や電費への影響も懸念される。さらに開口部が増えることで、風切り音や雨音、振動対策といった走行時の質感を保つ難易度も高まる。静粛性を重視する現代ミニバンとの両立は、決して容易ではない。
現在の国内市場では、ポップアップルーフはベース車に架装を施すビルダーや特装車の領域で提供されるのが主流だ。大手メーカーが標準グレードとして電動ポップアップルーフを再投入する動機は限定的と考えられる。大きな要因は、電動化車両との相性の悪さにある。バッテリー搭載で車重が増した現代の車両に、さらに屋根に重量物を載せれば、走行性能や航続距離が悪化する。
実用面でも課題は残る。ボンゴフレンディのオートフリートップでは、開閉不良の修理事例や、生産終了後の部品供給に苦労するオーナー投稿が複数報告されている。テント生地も濡れたまま放置すると劣化しやすく、一定のメンテナンスを前提とする装備であることは否めない。
全国の販売網を通じて一律の品質保証を提供するには、メンテナンス体制の維持コストが過大となる。そのため、当面は特定用途向けの特装装備として位置づけられる可能性が高いだろう。