市場拡大と主導メーカー――スズキが握る4割シェア【短期連載】インドは自動車産業にとって桃源郷となり得るのか(2)

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世界第3位の自動車市場に浮上したインド。2025年は551万台、伸び率5.5%で主要国中トップの成長を示した。4割を握るマルチ・スズキを軸に、日韓勢優位の構図は揺るがないが、高関税見直しやFTAを追い風に欧州勢も攻勢を強める。生産拠点としても存在感を高めるインドの実像に迫る。

高関税が促す現地生産

インド(画像:Pexels)
インド(画像:Pexels)

 自動車メーカーがインドで生産を拡大する背景には、輸入車に対して70~110%という高関税が課されている事情がある。工業化の途上にあるインドが国内産業を育成するため保護政策を採るのは理解できる面もあるが、その恩恵を受けているのはシェアの約70%を占める日本勢と韓国勢である。

 この構図を変えようとする動きが出るのは自然な流れだ。実際、インドは2026年1月末、EUとの自由貿易協定(FTA)合意により、欧州製高級車の関税を110%から30%へ引き下げた。欧州勢にとっては参入環境の改善となる。

 一方、中国に対しては国境問題を抱えることもあり、安全保障の観点から中国メーカーのEV販売を抑える姿勢を取っている。このため日本勢や欧州勢は、中国勢との価格競争を一定程度避けられる状況にある。ただし、中国は2024年度の貿易総額1277億ドルでインドにとって第2位の貿易相手国だ。政治的な関係が改善すれば、中国メーカーに市場を開放する可能性も否定できない。

 後発メーカーは早期に市場での基盤を築きたい考えだが、高関税や外交方針の変更によって競争環境が変わるリスクは残る。インド市場は成長余地が大きい一方で、政策動向に左右されやすい側面も抱えている。

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