なぜ世界はEVに熱狂し、失望したのか?――「補助金疲れ」でも止まらない、国家とメーカーの消耗戦
EV普及という「環境保護」の建前の裏には、資源安保と産業再興を巡る各国の生々しい本音がある。ロシア産ニッケルが市場の1割を握る等の供給網リスクや補助金疲れで普及は停滞するが、米国の規格統一圧力など「非関税障壁」を巡る攻防は激化。政治経済の視点から、資源小国・日本が直面する電動化の真実を浮き彫りにする。
生々しい各国の思惑

本稿の趣旨を整理すると以下のようになる。
EVをはじめとする環境対応車の普及促進は、環境問題にとどまらず、
・経済安保
・エネルギー安全保障
・国内製造業への投資呼び込み
といったさまざまな思惑の元進められてきた。
グローバリズムへの反省やウクライナ戦争による天然資源が高騰等により、そのニーズはより高まったが、同時に電動車の電池に使われるレアアースも中国・ロシアが握っているため、電動車の普及で安全保障リスクは下がらなかった。BYDが低価格EVの覇権を握っていることも大きい。各国政府の「補助金疲れ」により補助額を縮小させた結果、EV普及は踊り場になった。とはいえ当初の思惑にあった
・天然資源枯渇問題
・国内産業への投資喚起の必要性
は何ひとつ変わっていない。グローバル化で失った自国製造業を国内回帰させたい動機はむしろ強まっている。産業政策、経済戦略として電動化を推進し、したたかに経済成長と経済安全保障を成し遂げたいという状況は日米欧共通。したがって電動化は継続される。
日米関税交渉ではCEV補助金のやり方やチャデモ充電規格が非関税障壁と指摘された。このように、自国電動車の販売を促進させるために政治的に圧力を加えてくることはこれからも起こり得る。前途多難な状況は続く。
このように、国際政治経済の視点からEVをはじめとする電動車の普及を考察すると、生々しい各国の本音が見えてくるとともに、資源小国である日本が引き続き電動車の普及を進めたがる意味も見えてくるのではないだろうか。