なぜ世界はEVに熱狂し、失望したのか?――「補助金疲れ」でも止まらない、国家とメーカーの消耗戦
EV普及という「環境保護」の建前の裏には、資源安保と産業再興を巡る各国の生々しい本音がある。ロシア産ニッケルが市場の1割を握る等の供給網リスクや補助金疲れで普及は停滞するが、米国の規格統一圧力など「非関税障壁」を巡る攻防は激化。政治経済の視点から、資源小国・日本が直面する電動化の真実を浮き彫りにする。
米国と日本の思惑

米国や日本はロシアの天然資源に依存する必要性は少ない。ではなぜ米国や日本は環境対応車の普及に熱心だったのだろうか。
米国は自国の製造業の衰退に歯止めがかからなくなってきた。ラストベルト(かつて鉄鋼や自動車産業で栄えたが、現在は工場の閉鎖や産業の空洞化によって荒廃が進んだ米中西部から東北部にかけての工業地帯)の荒廃は顕著で、
・自国製造業の再活性化
・グローバル化で流出した産業の自国回帰
は政治経済上の重要な課題となっていた。対中貿易赤字も課題となっている。
第一次トランプ政権、バイデン政権、第二次トランプ政権を通じて「米国・ファースト」の経済圏の確立、「Made in USA」の復活は常に重要な課題となっているのである。建前の議論においては、バイデン政権はリベラルで環境保護に熱心だが、トランプ政権はそうしたことに関心がなく、両者には大きな差があるように見える。だが、産業の自国回帰は両政権ともに強い関心を示しており、例えば半導体産業の米国回帰などは常に図られてきた。そして、産業投資を呼び込む起爆剤として、バイデン政権は環境対応車への多額の補助政策を打ち出したのである。
その点は日本にも通じるものがある。原油価格の高騰により世界各国でガソリンや軽油の価格が上昇し、これらの燃料を必要としないEV販売が課題となった。また、
「失われた30年」
による経済低迷に苦しむ日本は、新たな投資を活性化するきっかけづくりに飢えている。そうした投資を呼び込む建前として産業構造の転換、環境対応、GX化が叫ばれることとなったのである。