なぜ世界はEVに熱狂し、失望したのか?――「補助金疲れ」でも止まらない、国家とメーカーの消耗戦
日米関税交渉での衝撃

とはいえ、伸びは減速しているものの、依然として中国市場を中心として世界のEV販売は進んでいる。自国製造業への投資喚起といったそもそもの動機は何ひとつ解決していないし、日本や欧州が資源小国であることも無論変わらない。そうしたことからも、マルチパスウェイを取るとしても、世界の車における電動化の動きは止まることはないだろう。
米国においても、自国製造業を活性化させたいという動機は全く変わっていない。むしろ国際経済がブロック化していくにともない、その動機は強くなっているとすらいえるのかもしれない。
そんななかで、2025年(石破政権時)の日米関税交渉の際に、ある“事件”が起きた。トランプ政権は、日本への関税を緩める代わりに、さまざまな要求を突き付けたのだが、そのなかに、
「日本のCEV補助金(環境対応車への補助金)が燃料電池車(FCV。搭載したタンク内の水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を作り、モーターで走る自動車)に偏りすぎている。これは非関税障壁である」
という指摘があったのだ。その結果、経済産業省は、EVとFCVの補助額差が縮まるよう、FCVへのCEV補助金を縮小することを約束させられたのである。
米国からの非関税障壁の名指しによる圧力はそれだけにとどまらない。日米関税交渉時に同時に指摘されたのは、日本の充電池の規格である。EVの急速充電器は、日本では独自の「チャデモ規格」というものを作っており、これに補助がなされるという建付けであった。だがこれが非関税障壁だというのだ。米国のテスラは「NACS」という規格を採用しており、米国政府はこれをグローバルスタンダードにさせようと圧力をかけている。国際的にも徐々にNACS規格が採用されつつあり、国内でもマツダはNACS規格を採用すると発表した。
このように米国政府は自国経済に有利な方向に進むよう圧力をかけており、米国に限らずこうした政治的圧力をかけることは今後も機会を見つけては行われると思われる。日本はそれへの対応も迫られることになり、前途多難な状況は続くといえる。