なぜ世界はEVに熱狂し、失望したのか?――「補助金疲れ」でも止まらない、国家とメーカーの消耗戦
EV普及という「環境保護」の建前の裏には、資源安保と産業再興を巡る各国の生々しい本音がある。ロシア産ニッケルが市場の1割を握る等の供給網リスクや補助金疲れで普及は停滞するが、米国の規格統一圧力など「非関税障壁」を巡る攻防は激化。政治経済の視点から、資源小国・日本が直面する電動化の真実を浮き彫りにする。
欧州の資源問題

世界のEV普及のけん引役となってきたのは欧州である。欧州がなぜ環境対応車の普及に熱心になったかといえば、もちろんリベラリズム(個人の自由や多様性を尊重し、国際協力や地球規模の課題解決といった普遍的な価値を重視する思想)による環境問題への関心の高まりもあるが、地政学的な天然資源の問題が存在するからだ。
例えば英国の北海油田は2000年代から枯渇が問題となってきた。2000年代、英国の経済は北海油田の枯渇とリーマンショックのダブルパンチで苦戦を強いられてきたのである。
では枯渇した原油をどこから買ってくるのか――欧州に近い天然資源大国といえば、ロシアである。ではロシアから原油や天然ガスを買えば、それで問題は解決するだろうか。そうではない。ロシアとは地政学上の外交・安全保障的リスクがある。ロシアの原油や天然ガスといった天然資源に依存することは、そのまま
「外交・安全保障上のリスク」
を抱え込むことになる。それが顕著になったのがウクライナ戦争であった。
英国に限らず、欧州各国は、ロシアの天然資源に依存するわけにはいかなかった。そこで原油を使わないEV普及が課題となったのである。