EVを「残クレ」で買うのはアリ?ナシ? ── 「月額さえ安ければ」の裏で進む、残価率低下のリアル
米ハーツの3万台放出やテスラの値下げが招いたEVリセール低下は、中古相場を破壊し、低月額を支えた販売モデルを終焉へ導いている。残クレは今や数年後の巨額精算を強いる「負の爆弾」だ。補助金が金融コストに飲み込まれる中、車を資産ではなく消耗品と見なす、利用への強制転換という過酷な現実を解剖する。
乗り換えられないオーナー

残クレの前提となる相場予測が外れると、契約期間が終わった時点で車を返却しても、思いのほか多くの負債が残ることになる。追加精算の負担が大きければ、ユーザーは新しい車に買い替える資金を用意できず、価値の下がった旧車を手元に置き続けるほか選択肢がなくなる。
こうした状態は、技術の進歩から切り離され、実質的に市場に閉じ込められた状況である。バッテリー性能が低下した車を抱えて動けなくなる所有者が増えれば、これまで産業の活力を支えてきた新陳代謝も停滞せざるを得ない。
販売現場への影響も無視できない。下取りしたEVを適正価格で再販できなければ、店舗には不良在庫が積み上がり、収益構造が直接的に揺らぐ。将来のリスクを避けるため下取り価格を下げれば、販売力は削がれる。
逆に価格を維持しようとすれば、ディーラーは壊滅的な損失リスクを抱えることになる。メーカーが販売台数の積み上げを優先するほど、末端の流通網は、価値を失った車両という重荷を背負わされる構造が明らかになる。
こうして乗り換えのサイクルが滞り、新車需要が低下すれば、販売金融と中古車流通の連鎖は断ち切られる。一部の契約不履行だけにとどまらず、市場全体の循環機能に深刻な影響を与えることになる。経済的な合理性を失った取引が続くことで、市場は活力を失い、業界全体が長期的な停滞に向かう可能性が高まるだろう。