「車は後、まずはドライバー確保」静岡県の自治体が踏み出す「公共ライドシェア」の正体、逆転の交通戦略を考える

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下田市では、住民が日常の移動を収益機会に変える公共ライドシェアの講習会を開始。国交省認定を受けた近隣住民が地域交通を支え、福祉や流通への情報活用も視野に入れた実践的な人材育成が進む。

人材育成が先

「ミライモビリティ・ラボ」(画像:ウィラー)
「ミライモビリティ・ラボ」(画像:ウィラー)

 2026年1月23日、ウィラー(大阪市)の公式サイトでプレスリリースが公開された。静鉄タクシー(静岡市)とCommunity Mobility(東京都中央区)は、国土交通省の「交通空白」解消パイロット・プロジェクトに採択された「ミライモビリティ・ラボ」で、「自家用有償運送大臣認定講習」を実施する。

 地域住民が地域住民のために動く、未来の地域交通を支える人材を育てる試みであり、下田市の公営施設を利用して行われる講習会の告知でもある。開催は1月から2月までの全4回で、各回の定員は6人。ただし、応募状況次第で増員の可能性もある。対象は地域住民や関係人口、地方で複数の仕事を行う人など幅広く設定されている。

 ミライモビリティ・ラボは、新交通の人材育成を目的に国交省プロジェクトに採択された事業である。下田市での取り組みでは、まず公共ライドシェアを担う地元ドライバーの教育を優先し、その上で事業全体を立ち上げる流れを採用している。

 プレスリリースには

「本講習は人財育成を目的としており、当エリアにおける具体的なライドシェア事業の開始を告知するものではありません」

と明記されている。現時点で運用できる車両や拠点が整っているわけではなく、まずは稼働できる人間を確保することに特化している点が重要だ。

 この順序の合理性は、地方の移動手段不足が車両の数ではなく、

「運行を担える人材の不足に起因している」

という分析に基づくだろう。各家庭にある既存の車両を活用できることから、事業の成否は末端で動く人間の心理的障壁を取り除き、どれだけ多くの稼働登録者を確保できるかにかかっている。

「鶏が先か、卵が先か」

という議論があるなかで、車両よりもドライバーを優先する姿勢は、固定費を抑えつつ供給能力を最大化する、現実的で効率的な参入手順といえるだろう。

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