「トヨタ依存」からの決別?――スバル2500億円の決断、BEV自社生産で奪還する「製造主体」のプライド
混流生産の選択

スバルの矢島工場では、日本向けレガシーアウトバックや米国向けフォレスターの生産を終え、2025年8月から大規模な生産ライン改修に着手した。重点は、EVの普及が不透明ななかで、需要変動に即応できる体制の柔軟性に置かれた。
エンジン車と同じラインでEVを流す混流生産を整備し、あわせてトヨタのハイブリッドシステムを搭載した「eボクサー」の生産能力も拡大した。矢島工場のEV生産能力は年間20万台に達する見通しで、今後はBEV専用ラインの追加や米国拠点での生産開始も視野に入れる。
2025年11月に公表された「SUBARU 2025方針」では、生産の柔軟性を徹底して追求すると明記された。BEVとエンジン車の混流に加え、日米拠点やラインを連携させるブリッジ生産を導入することで、世界規模の需要変動を吸収し、設備と人員の稼働率を最大化する狙いがある。
この混流生産の採用は、莫大な投資をともなうBEV専用工場の建設をためらうメーカーに対する、スバルなりの生存戦略ともいえる。表向きは柔軟な対応のように見えるが、実際には需要が停滞した場合に即座にエンジン車へ生産を戻せる防波堤の役割も果たしている。
こうした柔軟性の追求はスバルだけの話ではない。業界各社も、BEV専用ラインを正当化できるほどの需要が確定するまで、既存モデルとの混流で投資負担を抑える傾向が強まっている。
トヨタの元町工場では、駆動方式やモデルの異なる9車種を同時に生産できる体制を整える。生産能力は同規模工場よりやや下回るが、効率よりも新しい生産手法の検証と改善を優先しているためだ。マツダ防府工場H2ラインでは、ラージ商品群4車種の混流生産を実現するため、無人搬送機(AGV)を用いて部品をラインに同期させている。ダイハツ九州大分第1工場も、軽自動車特装車の生産で培ったノウハウを活かし、大規模専用設備を置かずに既存ラインでエンジン車とBEVの混流を可能にした。
各社が進めるこのスモールアセット戦略は、先行きの不透明な電動化に対する抵抗策であり、限られた経営資源を最大限活かす合理的な手段だ。BEVとエンジン車という異なる工程の製品を同一ラインで扱う複雑さは、現場の熟練工の暗黙知に支えられており、結果として他社の追随を許さない製造上の障壁となる。
需要の不確実性が高まるなか、初期投資を抑えつつ生産の“逃げ道”を確保するこの手法は、生き残りをかけた現実的な判断といえるだろう。