脱中国か、それとも中国依存か? ネクスペリア発「自動車産業危機」――半導体・希少金属供給の辛らつ現実とは

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オランダ半導体ネクスペリアの供給停止が欧州自動車産業を直撃。中国依存が浮き彫りとなり、LED制御用半導体の最大4割や水酸化リチウム69%など、代替困難なリスク管理の現実が迫る。

完全デカップリングの非現実性

中国国旗(画像:Pexels)
中国国旗(画像:Pexels)

 欧州の自動車メーカーにとって、中国は依然として重要な市場であり、自動車部品や希少金属の主要な供給国でもある。一方で、中国側も欧州メーカーが持つ技術や資本を必要としており、両者は相互依存の関係にある。

 その象徴が半導体の供給構造だ。ネクスペリアが製造する半導体のウエハーは、ドイツから供給されている。仮にドイツが輸出を止めれば、ネクスペリアは生産を継続できず、サプライチェーンは国境を越えて複雑に絡み合っている。特定の国だけで完結する構造ではない。

 こうした状況から、欧州と中国は「戦略的パートナーシップ」を築いてきた。ただし関係が深まりすぎた結果、完全なデカップリングは現実的でないことが明らかになった。半導体や希少金属の安定供給には時間とコストがともない、市場依存を無視した撤退は収益モデルを直撃する。新規サプライヤーの開拓や工程分散も品質・歩留まり・納期の面で制約が大きく、短期間での実現は困難だ。

 それでも、現状依存を放置することは経済安全保障のリスクを高める。現実的な落とし所は、依存関係を前提にしつつ管理する「部分的な依存管理」だ。具体的には、ASEANや東欧諸国への工程分散、重要部材の備蓄制度、長期契約や共同開発による供給安定化、国内回帰の検討などが考えられる。

 問われているのは中国への依存そのものではなく、代替不能の依存をどこまで許容するかという産業のあり方だ。この判断は、自動車メーカーや業界団体だけで担えるものではなく、政府による戦略的な関与が不可欠だ。欧州が選ぶべき道は脱中国か、依存の最適化か。危機後の産業構造は、各国政府と企業がどのリスクを引き受けるかによって形づくられる。

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