脱中国か、それとも中国依存か? ネクスペリア発「自動車産業危機」――半導体・希少金属供給の辛らつ現実とは
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筆者の意見

今回の危機は偶発的な出来事ではない。欧州や日本が長年温存してきた中国依存型の産業構造に内在するリスクが、表に出ただけだ。具体的には、半導体パッケージング工程の中国集中、希少金属の一国依存、国産化比率の低下という三つの要因が重なっている。
パッケージング工程への依存は、今回の半導体輸出制限の影響が自動車メーカーではなく、ボッシュに代表されるTier1部品メーカーに集中した点からも見て取れる。大手部品メーカーは複数の完成車メーカーに同時供給しているため、ドイツではVW、BMW、メルセデス・ベンツなど広範な企業に波及した。
希少金属だけでなく、リチウムイオン電池の原材料である水酸化リチウムの供給も中国に偏っている。2022年の輸出実績では中国が世界全体の69%を占め、2位のチリの12%を大きく引き離した。
国産化比率の低下は、国際分業の進展やコスト差を前提としたサプライチェーン最適化の結果だ。ただ、今回のようにリスクが顕在化した以上、将来を見据えた修正は避けられない。部分的なデカップリングを進め、ASEANや東欧諸国への分散、あるいは国内回帰によって一国集中を是正する必要がある。
米国が自動車部品の国産比率に数値目標を設けているのは、過度な効率追求を見直し、経済安全保障を確保する狙いがある。半導体産業の立て直しを目的としたCHIPS法も同じ文脈だ。希少金属の分野では、欧州連合(EU)が欧州投資銀行を通じ、パートナー国での採掘や精錬、リサイクルへの投資を促進する方針を示した。EUはさらに、日本が1983年度に創設したレアメタル備蓄制度にならい、新たな備蓄制度の導入を進めている。
友好的な対話だけでは供給リスクは管理できない。異常時を想定し、国家が一定の関与を行う経済安全保障の枠組みが、現実的な選択肢として求められている。