「トラクターの運転」実は命がけだった! 死亡事故率を下げる「シートベルト義務化」の現実とは
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農業現場で年間約240人が死亡するトラクター事故。乗用型トラクターの道路走行におけるシートベルト義務化が2027年1月に決定し、非着用時の致死率18%を2%に低下させる安全対策が法規制として強化される。
農作業死亡率の現状

農作業事故の実態を見ると、トラクターは年間の農作業死亡事故で最も件数が多い機械のひとつだ。農林水産省の統計によると、令和3(2021)年の農作業事故死亡者は242人で、就業者10万人当たりの死亡事故者数は10.5人に達した。
これは他産業と比べても高い水準であり、農業が抱える「安全上の高いリスクコスト」を示している。「農業機器作業に係る事故」は171人(70.7%)を占め、農業機械作業の安全対策強化が喫緊の課題であることが明らかだった。
その後も状況は大きく改善されていない。令和4(2022)年の農作業死亡者は238人、令和5(2023)年は236人で、ほぼ横ばいが続いている。「農業機器作業に係る事故」も依然として高い割合を示しており、令和4年は152人(63.9%)、そのうち乗用型トラクターによる事故が62人(26.1%)だった。
令和5年も147人(62.3%)、乗用型トラクターによる事故は61人(25.8%)で、令和3年の58人(24.0%)とほぼ同水準だ。毎年、死亡事故の中でトラクターの比率は高く維持されており、これは農業という産業の安定的な人材確保を阻害する大きな要因となっている。
トラクターは農地内だけでなく、公道を短距離ながら走行することも多く、一般車両と同じ交通空間を共有している。道路走行中は一般車両との接触や追突の危険があり、乗用車と同等の安全対策が求められてきた。
今回、トラクターのシートベルト義務化が決定したのは、このような公道の安全基準の統一化と、農業という基幹産業のリスクを低減するという背景がある。死亡事故を防ぐには、シートベルト着用が極めて有効であり、結果としてトラクターによる死亡事故率の低下、ひいては農業経営の安定化に直結するとされている。