「私鉄王国」に潜む廃線通告! 100km超路線の「老舗ローカル線」を救えない自治体ジレンマ

キーワード :
, ,
人口減少と燃料高騰で収支が逆転する富山地方鉄道は、一部区間廃止の一時回避に留まる。総延長108kmの大規模地方私鉄は、自治体支援や「みなし上下分離」を軸に、新たな鉄道再生モデル構築が求められている。

株主構造の富山関係

富山地方鉄道本社(画像:菅原康晴)
富山地方鉄道本社(画像:菅原康晴)

 有価証券報告書によると、2025年3月31日現在、富山地方鉄道の筆頭株主は立山黒部アルペンルートを運営する立山黒部貫光(かんこう)で11.05%、次いで富山県が3.56%である。上位には銀行や保険会社、電力会社なども名を連ねるが、上位10社を合計しても22.82%にとどまり、支配的な株主はいない。

 一方、あいの風とやま鉄道は第13期事業報告によれば、筆頭株主が富山県で63.0%、次いで富山市が14.0%となっている。沿線自治体や電力会社も株主に名を連ねるが、富山県が過半数を占めており、典型的な第三セクター鉄道の株主構成である。

 富山地方鉄道の筆頭株主である立山黒部貫光も、有価証券報告書によると2024年3月31日時点で、筆頭株主が富山地方鉄道で24.8%、次いで富山県が17.8%となっている。両社は相互に株式を持ち合う関係であり、あいの風とやま鉄道ほどではないものの、富山県も大きく関与していることがわかる。

 富山県が富山地方鉄道に直接出資している割合はわずかである。しかし、立山黒部貫光については、過半数ではないものの大株主である。立山黒部アルペンルートを売り込みたい富山県としては、立山線を存続させることでルートの寸断を避けたい意向が働きやすい環境にある。

 一方で、富山地方鉄道とあいの風とやま鉄道が一部競合する本線では、こうした意向は働きにくい。かつてあいの風とやま鉄道が国鉄・JRだった時代であれば、持ち株比率は少なくても、富山県は富山地方鉄道を躊躇なく支援する方向に動けたかもしれない。

 しかし、現在は第三セクターの支配株主という形で、並行在来線の

「実質的な経営者」

となっている。形式上は民間企業である富山地方鉄道を支援しにくくなった側面もあると考えられる。

全てのコメントを見る