都営大江戸線4km延伸は「誰得」なのか? バス限界&人口減少を無視? “黒字化40年”試算を考える
約1600億円を投じる大江戸線延伸計画が動き出した。だが「鉄道空白解消」の名目だけでは語れない。人口減少、需要変動、バス再編――事業採算と生活価値の両面から、都の判断が試される局面にある。
黒字化試算の「条件」

都は今回の延伸について、40年以内に黒字化できると試算している。しかし、この前提は運賃収入や再開発効果を最大限に見積もったシナリオであり、理想状態を前提にした計算といえる。建設費1600億円に加え、今後は維持管理費や設備更新費も継続的に発生する。公共交通の損益評価では、通常は最良・最悪・中間の複数シミュレーションを用いるが、この試算では最良ケースだけが独り歩きしている印象が強い。
都営地下鉄は原則として独立採算制を採っている。ただし、東京都交通局の令和6年度決算総括表(速報値)を見ると、地下鉄事業(高速電車)には一般会計からの補助金や出資金が含まれている。一般会計の性質を踏まえれば、実質的には税収が投入されているといえる。問題は、延伸によって都営地下鉄全体の収支がどのように変化するかを示さないまま、「黒字化」を強調している点だ。加えて、人口減少やテレワーク定着による需要変動リスクも十分に織り込まれておらず、「40年で黒字化」という試算の信頼性には、さらなる検証が求められる。
もちろん、沿線再開発を同時に進めれば、鉄道事業単独ではなく都市開発パッケージとして収益構造を組み立てる余地はある。問題は、試算がその視点まで踏まえたものかどうかである。
練馬区の人口は2025年時点で75万人を超え、東京都内で世田谷区に次ぐ規模となっている。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2025~2035年に約2.4万人増えるとされる。一方で、2041年をピークに減少へ転じる見通しもある。高齢化の進行も避けられず、人口構成の変化を前提にした都市計画と鉄道需要の見立てが問われる段階に来ている。