都営大江戸線4km延伸は「誰得」なのか? バス限界&人口減少を無視? “黒字化40年”試算を考える
延伸計画を覆う人口動態リスク

東京都は「1日6万人の利用増」「B/C1.0以上」「40年以内に黒字化」を試算している。しかし、これらはあくまで理想的な前提を置いた試算にすぎない。現実には、複数の不確定要素が想定以上に重くのしかかる。
最大のリスクは人口動態だ。練馬区でも少子高齢化は確実に進む。加えて、DX関連産業の集積にともない、テレワークが一定数残るという見方も根強い。定期券収入の安定性は、かつてほど期待できない。
また、今回の終点となる大泉学園町駅は、西武池袋線の大泉学園駅とは別の場所に設置される。都営大江戸線は光が丘から大泉町・大泉学園町を経て、最終的にJR武蔵野線・東所沢駅まで延伸する構想が示されている。練馬区も大泉学園町駅周辺のまちづくりを本格化させる方針で、再開発を前提にした都市政策を進める見通しだ。周辺路線バスが新駅へ乗り入れるのは確実だが、既存の大泉学園駅との距離がある以上、都心への通勤経路をどう分散できるかが課題となる。
大江戸線は23区内を環状するため、接続性は高い。池袋、渋谷、飯田橋、有楽町、銀座といった都心エリアに加え、西武線経由で横浜方面へ向かう流れも成立する可能性がある。しかし、利用者が23区内へ集中すれば、小型車両を採用する同線では輸送力不足が顕在化しかねない。沿線企業側の勤務形態や時差通勤の受容度も、需要予測の精度に影響する。
練馬以西から都心に直通するのか、あるいは西武池袋線・有楽町線・副都心線への乗り換えを前提とするのかで、ネットワーク効果は大きく変わる。この前提整理を怠れば、需要推計の信頼性は限定される。
一方で、鉄道開業により光が丘~大泉間で新たな住宅・商業開発が進む可能性もあり、地域経済に波及する余地は大きい。今後は、都市開発と輸送需要を組み合わせた精密なシミュレーションが不可欠となる。