都営大江戸線4km延伸は「誰得」なのか? バス限界&人口減少を無視? “黒字化40年”試算を考える
約1600億円を投じる大江戸線延伸計画が動き出した。だが「鉄道空白解消」の名目だけでは語れない。人口減少、需要変動、バス再編――事業採算と生活価値の両面から、都の判断が試される局面にある。
交通不便地域の実態
練馬区北西部は公共交通の利便性が低い地域である。光が丘駅以北には鉄道駅がなく、住民の移動は路線バスへの依存度が高い。エリアを走る主な路線は、西武バス、関東バス、国際興業バス、そして区が運行するコミュニティーバス「みどりバス」だ。
西武バスは、東武東上線の成増エリアから、西武池袋線沿線、さらにJR中央線の荻窪・吉祥寺方面までを南北に結ぶ中心的な事業者である。国際興業バスは成増と石神井公園を土支田経由でつなぎ、関東バスも阿佐谷・荻窪と石神井公園を結ぶ路線を持つ。「みどりバス」も保谷、大泉、関町などを結び、今回の大江戸線延伸対象エリアと重なる。
一方で、一部路線は本数が少なく、最寄り駅までバスで移動しなければ通勤が成り立たない地区も多い。住宅開発が進み人口も増加するなか、2024年問題を背景に、路線バスの通勤輸送は限界に近づいている。筆者(高山麻里、鉄道政策リサーチャー)も当該エリアのバスを頻繁に利用するが、ラッシュ時の混雑は悪化し、光が丘駅の負荷は明らかに高まっている。
道路幅員や車両数、ダイヤ編成といった制約があり、地上交通だけでは処理能力の拡大が難しい。自動運転による改善もまだ先の話で、本数の増便も簡単ではない。大江戸線延伸は「利便性向上」という表向きの理由だけでなく、既存システムの限界に対する
「受け皿」
としての性格も強い。