赤字2.9億円、ほぼ観光依存…「静岡の地方鉄道」独自戦略で再起は可能なのか?
外部経済吸収と親会社動向

コロナ禍からの復活を待たず、台風の被害に見舞われた大井川鐡道は現在、大きなダメージを受けている。しかし筆者(銀河鉄道世代、フリーライター)は、極限まで観光輸送に特化した鉄道ビジネスモデルと、その他事業が本業を支える収益構造自体は今後も揺るがないと考えている。
沿線には奥大井湖上駅など、世界的にも唯一無二の景観がある。加えて、長年のSL運行実績や、それに続くさまざまな観光列車の運行は他社の追随を許さない。現況、一部不通区間はあるものの、私鉄で全長65.0kmに及ぶ「長大な鉄道テーマパーク」が成立し得る環境は、大井川鐡道以外には考え難い。
類似例としては全長20.1kmの黒部峡谷鉄道がある。しかしこちらは関西電力の100%子会社で、電力会社の業務用鉄道としての性格が強い。大井川鐡道とはバックボーンが大きく異なる。
一方、その他事業はどうか。大井川鐡道は2018年以降、川根温泉ホテルや温浴施設「伊太和里の湯」の運営を受託し、体験型フードパーク「KADODE OOIGAWA」に事業参画している。また、傘下の旅行会社を通じてフジドリームエアラインズと連携し、静岡空港とのコラボプランを販売するなど、地域の企業・団体とも多方面で協働してきた。
大手私鉄グループのような大規模かつ広域の事業展開ではないものの、鉄道事業が持つ外部経済を着実に吸収しているといえる。
注目すべきは、2015(平成27)年に大井川鐡道の親会社となったエクリプス日高である。同社は北海道新ひだか町で静内ウエリントンホテルを運営する会社だが、ホテル運営会社というより投資会社としての側面が強い。オーナーは馬主で資産家という情報もあり、ややミステリアスな印象を受ける。
静岡県内では2017年、弁当・惣菜チェーンの天神屋を傘下に収め、大井川鐡道とのコラボ商品を販売するなど相乗効果も図っている。ホテル事業や飲食事業での知見や人材を、大井川鐡道と共有することは想像に難くない。
今後は、現在不通となっている本線の川根温泉笹間渡~千頭間の復旧が待たれる。全線での営業運転再開が期待されるところだ。