もしかしたら、男性の育休取得を後押しするのは「ドライバー経験」なのかもしれない
育休に対する“ズレ”の埋め方

果たして、
「来月○日は、子どもの保護者会があるので有休を取得します」
そんな申し出をする男性社員と一緒に仕事する職場の同僚や上司、部下たちにはどんな感情が芽生えるだろうか?
「当然だ」とすんなり受け入れる者もいれば、
「男のクセそんな理由で休むのか」
といぶかしく思う者もいるはずだ。家事育児に対する認識が変わる過渡期の中だからこそ生じてしまう、それぞれの“思いのズレ”は、職場に不協和音を生じさせる要因となりうる。
“思いのズレ”を埋めるには、立場が異なると見え方も変わることを知った上で、相手の立場を理解する必要がある。ヒントになるのは、身近にある視点転換の経験だ。
例えば、日ごろ健康な人が病気になったりケガをしたりして健康を害すると、不健康な状態になった側の視点を経験する。そんな視点転換を経験することで、病気やケガで苦しい思いをしている人を労わる気持ちが芽生えたり、健康でいることの大切さへの理解が深まったりする。
「ドライバー経験」という新視点

自家用自動車を運転するドライバーとしての経験も、視点転換をもたらしてくれる事例のひとつだ。ドライバーとしての経験は、歩行者側の視点とは立場の異なる新たな視点を与えてくれる。
国家公安委員会が作成した『交通の方法に関する教則』には、以下のように書かれている。
「横断するときは、手を上げるなどして運転者に対して横断する意思を明確に伝えるようにしましょう」
横断歩道を渡るときに「手を上げる」ことの必要性は子どもでも理解していることだが、ドライバー視点が加わると理解の深さが大きく変わってくる。
信号のない横断歩道で、ドライバーは横断待ちしている歩行者の存在をつい見落としがちだ。また、歩行者の存在に気づいても、横断歩道を渡ろうとしているのか立ち止まっているだけなのか見分けがつかないことも多い。
しかし、道路交通法第38条には、「横断歩道等における歩行者等の優先」が明記されているため、歩行者が横断歩道を渡ろうとしているのに停止せず横断を妨害してしまうと、反則金などの対象となってしまう。
また、特に視界が悪いときなどは、道を横断している人の存在に気づきにくいこともある。子どもやお年寄りなど、体格が小さい人だとさらに危険性は増す。その危険性は歩行者側から考えても想像できることではあるが、車を運転しているときに突然目の前の横断者に気づいてヒヤッとした経験がある人には、より強く認識される。
他にも、暗がりからの飛び出しや車道の端を走る自転車、自動車の死角や内輪差などの危険性に対する理解度は、ドライバー視点を備えている方が確実に深くなる。歩行者視点だけだと、「これくらい大丈夫だろう」と安易に考えたり、ついつい頭から抜け落ちてしまったりと、ドライバーとの間に“思いのズレ”が生じやすい。