もしかしたら、男性の育休取得を後押しするのは「ドライバー経験」なのかもしれない
多様な関係者に配慮を

歩行者とドライバー両方の経験がある人は、歩行者側とドライバー側の視点を切り替えることができる。この、視点転換能力は、歩行者とドライバーの間にある“思いのズレ”を理解する上で決定的に重要な要素だ。自動車の運転免許を持っていない人でも、シミュレーターなどを利用してドライバー視点を体感しておけば、歩行時の危険性への意識はグンと高まるだろう。
家事育児に主体的に携わる男性社員と、同僚・上司・部下たちとの間に生じる“思いのズレ”を解決する鍵も、そんな視点転換能力にある。視点転換ができないと、周囲は家事育児に主体的に携わる男性社員を頭ごなしに否定してしまったり、逆に腫れ物に触るかの如く過度に気を使い過ぎてしまったりということになりかねない。
それは既に、これまで家事育児に主体的に携わってきた女性社員に対して取られてきた態度に表れている。家庭運営側の視点を持ち合わせていない人ほど、どのように対処していいか戸惑ってしまうのだ。
家事育児への理解を深めることだけにとどまらず、視点転換能力を備えることの重要性は高まる傾向にある。職場にはさまざまな価値観や年齢、国籍、人種などの違いがあり、それらの違いを個性と捉えて生かすことで、職場の強みへと変えるダイバーシティ&インクルージョン(D&I:Diversity&Inclusion)の必要性は、今や世界中で認識されている。D&I推進において鍵を握るのも、多様な視点を切り替えることができる視点転換能力だ。
また、新時代のモビリティ開発のように、
・ドライバー
・同乗者
・歩行者
といった多様な関係者に配慮して推し進めなければならないビジネス上のミッション遂行においても、視点転換能力は標準装備が求められる。
ますます需要が高まるであろう視点転換能力は、異なる視点を学ぶことで磨かれていくものだ。そのために必要な訓練の場は、日常生活の中にあふれている。