秘境駅「上毛高原」はなぜ40年経っても駅名を変えないのか? 地元住民1.7万人超が署名した請願と、「実在しない地名」の経済的価値

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1982年開業の上毛高原駅は、実在しない地名を冠した秘境駅として知られる。署名数1万7702人の駅名変更運動が起きた一方、近隣温泉地は衰退傾向にある。まちづくりや水上温泉再生の進展次第で、駅名の「既成事実化」が地域ブランド力を左右する。

秘境駅が地域の玄関口

水上温泉で開催された廃墟マルシェ(写真:東京大学大学院都市デザイン研究室)
水上温泉で開催された廃墟マルシェ(写真:東京大学大学院都市デザイン研究室)

 現時点では、駅名の変更後の名称や地元負担額が明らかでないため、上毛高原駅の駅名変更による経済効果は未知数である。

 しかし筆者は、実在しない地名の仮称が続くことを悲観していない。加賀温泉駅や伊豆高原駅は、

「既成事実化」

によって知名度やブランド力を高めた例だ。同様に、上毛高原という地名も、既成事実化することで、より戦略的に活用できると考える。

 確かに駅周辺には大規模な観光資源は存在しない。しかし上毛高原駅は秘境駅と呼ばれつつも、水上温泉や猿ヶ京温泉へ向かう路線バスが運行されている。レンタカーを利用すれば、広域への玄関口として一定の機能を果たしているといえるだろう。

 上毛高原駅を核としたまちづくり構想策定委員会は、2022年3月に「上毛高原駅を核としたまちづくり構想(案)」を公表した。構想では駅名変更と併せ、新幹線駅周辺のまちづくりプロジェクトを掲げている。

・移住者向け住宅地開発
・駐車場整備
・高速バスターミナルの整備
・テレワーク・ワーケーション施設の整備
・商業施設誘致
・公共・観光施設整備

などが計画されている。公表時点では“絵に描いた餅”と思われたが、同町は2025年8月、行政・企業・大学が連携してまちづくりに取り組む拠点「アーバンデザインセンターみなかみ(仮称)」を駅前に2026年度設置すると発表した。具体化への動きが進んでいることを示す事例だ。

 水上温泉でも、近年は空き店舗の再生や既存旅館の復活プロジェクトが進行している。廃墟を活用したマルシェも好調で、新たな動きが始まった。

 こうした状況を踏まえると、上毛高原駅周辺のまちづくりや水上温泉再生が進めば、駅名に水上を入れなくても、上毛高原という「実在しない地名」の知名度は向上するだろう。同時に水上温泉の玄関口としての認知も高まり、既成事実化がさらに進む可能性がある。

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