秘境駅「上毛高原」はなぜ40年経っても駅名を変えないのか? 地元住民1.7万人超が署名した請願と、「実在しない地名」の経済的価値
1982年開業の上毛高原駅は、実在しない地名を冠した秘境駅として知られる。署名数1万7702人の駅名変更運動が起きた一方、近隣温泉地は衰退傾向にある。まちづくりや水上温泉再生の進展次第で、駅名の「既成事実化」が地域ブランド力を左右する。
駅名変更の効果は限定的

前述のとおり、上毛高原駅が立地する旧月夜野町は2005(平成17)年にみなかみ町の一部となった。このため、駅名に「水上(みなかみ)」を含めるハードルは下がったとされる。
しかし、筆者は駅名に水上を加えても、観光面で必ずしもプラスになるとは考えていない。かつて栄えた水上温泉は、今や首都圏近郊の多くの温泉と比べても求心力のある観光地とはいい難い。
上越新幹線開通前は、JR上越線の水上駅に特急列車が頻繁に停車していた。首都圏から北の奥座敷として賑わい、アクセスの利便性も高かった。
しかし、新幹線開通後、北の奥座敷の中心は新潟県の湯沢温泉へと移った。湯沢温泉は越後湯沢駅の目の前に広がり、リゾートマンションも乱立するなか、観光地として発展を続けている。これに対し、水上温泉は上毛高原駅からバスで約25分とアクセスが悪く、来訪客が湯沢温泉へ流れるのは当然の流れだった。
水上温泉衰退の理由は、新幹線への移行だけではない。かつては団体客を中心に集客し、歓楽街もあった昭和型の温泉地は、平成・令和の時代に合わなくなった。駅前で廃墟となった温泉旅館は、現在の水上温泉の象徴的な景観となっている。
現状では、駅名を水上に変更しても、上毛高原駅からバスで25分の水上温泉に来訪客が戻る可能性は低い。