なぜ現代のクルマは“品格”を捨てたのか──ロボット顔SUVが暴く12歳化社会とターゲット別購買行動

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近年の自動車デザインは「ロボット顔」に象徴される即物的な傾向が強まる。20代~50代の購買層や新興成金層の好みに応じた視覚的インパクト重視は、都市景観や文化的成熟との摩擦を招き、企業は調和と市場多様性を両立させる戦略を迫られている。

景観と自己顕示の衝突

都市景観のイメージ(画像:Pexels)
都市景観のイメージ(画像:Pexels)

 自動車は公道を走行するモビリティであるため、都市景観の一部として機能する側面を持つ。近年では、この観点から自動車デザインが再注目されている。

 成金層向けには「目立つ」デザインが好まれる。しかし街の景観への影響を考えると、必ずしもマッチするとはいえない。こうしたデザインは、都市景観の均質性や文化的成熟に影響を与える可能性がある。特に夜間の強烈なLEDライトや極端なメッキ装飾は、景観調和よりも自己主張を優先する象徴と見なされることもある。

 欧州の歴史的都市では、落ち着いた色調や洗練されたデザインの自動車が景観に溶け込みやすい印象がある。一方、日本や中国の大都市では派手な印象のSUVが街に馴染む場合もある。このように、デザインの受容性に一貫性を見出すことは難しい。

 デザインの選択が都市文化や地域住民の美意識とどう連動するかは興味深い。こうした視点から自動車デザインを発想することも、新たなアプローチになる。

 近年では、文化的価値よりも即時的な視覚効果や自己顕示を優先する傾向が強まっている。経済性を優先し、利益を拡大するには購入層ごとの差別化が不可避だ。しかし都市景観や環境負荷などの公共性の問題は置き去りにされ、後回しになりやすい。

 多様な消費者ニーズに応えようとすると、設計・生産は複雑化し、コストは増大する。成熟した消費者が減少する中で、企業は「わかりやすさ」で差別化する誘惑に駆られる。文化的価値や公共性よりも、短期的な販売効果が優先される傾向が広がりつつある。

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