軍事オタク記事が「ネットニュース」で超読まれる根本理由――孤立した関心がスマホで暴走? 見えない需要を可視化する
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仮説6「高齢化するネットの可視化」

近年、インターネットは必ずしも若年層の専有領域ではない。総務省の調査によれば、ネット利用は高齢層にも広がっている。たとえば、「令和5年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」では、60代のスマートフォン利用率が93.7%に達している。
Xの利用率は年代によって差がある。20代では81.6%だが、50代では37.0%、60代では19.6%にとどまる。一方でYouTubeの利用率は高く、50代で85.6%、60代でも66.3%にのぼる。
これらの数字からは、SNS上では目立たないが、情報を日常的に消費している高齢層の存在が見えてくる。前述のとおり、SNSに関する10万人大規模調査(田中辰雄・浜屋敏)によれば、以下のような傾向が明らかになっている。
・ネット上で過激化しているのは主に高齢者
・投稿の約半数は「0.23%」の人々によって行われている(約435人に1人)
彼らが関心を寄せるジャンルのひとつが軍事趣味である。XやInstagramでの積極的な発信は少ないが、その痕跡は別の場所に現れる。たとえば、ニュースサイトのコメント欄やYouTubeの再生数、ポータルサイトの閲覧ランキングなどがそれにあたる。
以前、神奈川県の赤ちょうちんでひとり飲んでいたときのことだ。隣から男性のぶつぶつとつぶやく声が聞こえたため、そちらを見た。60代くらいの眼鏡をかけた、髪ががぼさぼさの男性がブルートゥースイヤホンをつけ、軍事関連のYouTube動画を見ながら酒をあおっていた。ただひたすらに中国への文句が漏れていた。彼はお世辞にも「できるサラリーマン」には見えなかった。筆者はその光景に妙に納得した記憶がある。
こうした構造のなかで、若年層のSNSタイムラインには軍事関連の話題は現れにくい。それにもかかわらず、軍事記事はランキング上位に頻出する“ねじれ”が生じている。SNSで積極的に発信する「見える層」と、閲覧・収集に徹する「見えない層」には、利用実態の明確な非対称性が存在するのだ。
この非対称性が、軍事ジャンルの情報がネット上で上位表示される一因になっている可能性が高い。