「準中型免許」って本当に必要か? 若者の就職を阻む“35万円の壁”──なぜ物流業界は「高コスト免許」を押し付けるのか
準中型免許の導入から8年、若年層の物流業界参入を狙った制度改革は期待を裏切った。1100万人超の保有者は年々減少し、取得費用40万円超の壁や限定的な対応車種が若者の参入を阻む。現場は制度と市場の乖離に翻弄されている。
制度と現場が噛み合わぬ人材育成費

制度設計上、準中型免許は普通免許で対応できなくなった車両に乗れるようにする、18歳から段階的にキャリア形成できるようにすることを目的として導入された。形式上は、免許取得の間口が広がったことになる。しかし現実には、
・免許取得にかかる費用と時間の負担
・対応車種の限定
・職場での即戦力志向
が障壁となっている。その結果、制度が想定した若年層の流入は限定的だ。段階的なキャリア形成という理念も、即戦力を求める現場の実情や、若者のタイパ重視・リスク回避といった価値観とはかみ合っていない。制度は設けられたが、理念は十分に生かされていない。
準中型免許の新設により、教習所には新たな収益機会が生まれた。一方で、運輸業界には育成コストの増加という形で跳ね返っている。こうした状況に対して、業界側も対策を講じている。
例えば、トラック協会などが設ける若年ドライバー確保支援助成金制度がある。これは講習費用の一部を補助するものだ。ただし、補助を受けるには企業側がまず立て替え払いを行う必要がある。結果として、育成コストの負担が企業側に残る構図は変わっていない。制度そのものが、現場の人材確保を直接的に後押しするには至っていない。
とりわけ深刻なのは、2023年の新規取得者数が7万人台にまで落ち込んでいる点だ。各種の支援策が講じられているにもかかわらず、若者がトラック業界を志望しない実態が浮き彫りになっている。背景には、賃金水準の低さや労働環境の厳しさがある。
もし将来的に高水準の報酬や安定したキャリアが見込める業界であれば、準中型免許の取得者数は増えていたはずだ。免許制度だけで人材確保を図ろうとする発想自体が、すでに限界に達している。