高速道路「深夜割引」再延期、本当に“ETC障害”のせいなのか? 得をするのは誰か――運送業界が怯える「コスト増」の懸念

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深夜割引の再延期、その裏に見えるのは単なる障害対応ではない。割引時間帯の拡大と見せかけ、実はコスト抑制を狙う新制度。労働法制や現場の実情と乖離する設計が生む矛盾と混乱。制度疲労が露呈するなか、延期は準備不足ではなく、「逃げ道」なのかもしれない。

割引制度が生む分配格差

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 もうひとつ忘れてはならないのが、日本の高速道路政策そのものが制度疲労の段階に来ているという事実だ。全国の物流は依然としてトラック輸送に依存しているが、

・ドライバー不足
・長時間労働
・低賃金構造

という三重苦は解決の糸口を見せない。これに対し、料金割引という点の調整だけで制度全体の流れを変えようとするのは、構造そのものを無視した対症療法に過ぎない。料金政策の細部をいじることで、流通の流れが根本から変わると考えるのは非現実的だ。むしろ、本来必要なのは

・休憩施設の整備
・荷主との取引慣行の見直し
・運賃制度の再設計

といった、基盤レベルでの改革である。このような視点を持てば、今回の制度延期は準備不足ではなく、制度そのものの限界が延期という形で噴出したともいえる。

 今後、制度変更が仮に再開されても、それが全事業者にとって等しく有利になることはありえない。割引制度は、資本力のある大手運送企業が高度な運行管理を通じて最大化する一方で、中小事業者には調整コストという負担だけを残す。

 この構図は、経済的には収斂と集中を加速させる。すなわち、割引制度を活用できる事業者がより市場を取り込み、活用できない事業者が周縁化されていく流れだ。制度が公正であるかどうかは、割引があるかではなく、誰が使いこなせるかによって判断される。

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