岐阜「長良川鉄道」郡上市で一部廃線か? 乗客6割減&輸送密度「200人台」の現実、絶景路線に暗雲! 一部区間の見直し検討入りで考える

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岐阜県を走る第三セクター・長良川鉄道で、一部区間の見直し協議が始まった。慢性的な赤字が続いており、沿線5市町の財政負担が重くなっている。このため、郡上市内の区間の存廃が焦点となっている。

高山本線に奪われる訪日客

長良川鉄道のウェブサイト(画像:長良川鉄道)
長良川鉄道のウェブサイト(画像:長良川鉄道)

 郡上市は2004(平成16)年、八幡町、白鳥町など郡上郡7町村が合併して発足した。面積は約1030平方キロメートル。大半が山林だが、東京23区の約1.7倍、大阪市の約4.5倍という広さを持つ。人口の多くが行政、経済の中心部に当たる旧八幡町、福井県との交通の要衝となる旧白鳥町に集中している。

 夏の郡上おどりや白鳥おどり、「奥美濃の小京都」と呼ばれる郡上八幡城下町、アユ釣り、スキー場など多くの名所や観光イベントを抱える。しかし、観光公害といわれるほど訪日外国人観光客が殺到する同じ岐阜県内の高山市や白川村、下呂市のようなにぎわいはない。

 長良川鉄道は観光列車「ながら」を週末や祝祭日、夏休みを中心に年間約150日運行しているが、岐阜県の山間部を訪れる訪日客の流れは飛騨川沿いを走るJR高山本線に集中する。この流れを変えて観光で長良川鉄道を立て直すとなれば、ひと工夫もふた工夫も必要となりそうだ。

 2024年に初当選した郡上市の山川弘保市長は市議会3月定例会の施政方針で

「任期中に長良川鉄道のあり方について具体的な方針を示したい」

と述べた。岐阜県は長良川鉄道に2023年度で約2億円を支援した。岐阜県公共交通課は「全線運行を続けている以上、県の姿勢に変化はない」と当面、支援を継続する意向を示している。今後、郡上市を中心に将来のあり方議論が進むことになりそうだが、

「人口減少と高齢化社会の進行で沿線5市町の予算が先細りするなか、支援が限界に近づいている」

と不安視する声が沿線5市町の職員から聞こえた。沿線5市町は負担増の覚悟を決めて支援を継続するにしろ、一部廃線に踏み切るにしろ、苦渋の決断を迫られそうだ。

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