AIが自動車を「人間化」? テスラ・ウェイモ・トヨタが挑む自動運転2.0──手信号も読む“考えるクルマ”の正体
自動運転とAI融合の加速

日本でも自動運転と生成AIの融合に向けた取り組みが加速している。東京大学大学院工学系研究科松尾・岩澤研究室と自動運転企業ティアフォーは、2024年10月に「自動運転2.0」と呼ばれる次世代アーキテクチャの実現を目指すプロジェクトを開始した。
松尾研究所の技術顧問である松尾豊教授は、
「世界モデルは、人間の外界に関する知的能力をモデル化した技術であり、複雑な実環境下での安全な移動を実現する自動運転に欠かせない要素」
と述べている。このプロジェクトでは、大量の走行データを学習し、実世界の運転行動の常識を模倣する大規模世界モデルの構築を目指しており、End-to-End AIの実現を目標としている。詳細はプレスリリースで確認できる。
また、トヨタ自動車は「すべての人に移動の自由を」という目標のもと、2025年以降、東京・お台場エリアで「レベル4」の自動運転サービスを開始する計画を発表した。これは特定の条件下で人が運転に関わらない完全自動運転サービスで、国内初の公道での実施となる見込みだ。
トヨタの「Guardian」技術は、人間の能力を置き換えるのではなく増大させることを目指して開発されている。この技術は、戦闘機のコントロール技術にヒントを得た人間と機械の調和的制御が特徴で、OTA(Over The Air)技術を活用し、ソフトウェアを常に最新の状態に保つことができる。
一方、ホンダとソニーの合弁会社ソニー・ホンダモビリティも注目を集めている。2022年9月に設立された同社は、自動運転EV「AFEELA」の開発を進めており、2025年に販売予定だ。AFEELAは生成AIを積極的に活用し、ADASや自動運転機能、ユーザー体験の改善に取り組んでいる。
また、先進運転支援システム(ADAS)のパーセプション(認識)には、大規模言語モデル(LLM)で使われる「トランスフォーマー」技術を応用した「Vision Transformer(ViT)」が採用されており、演算処理性能が800TOPSの車載SoC(システム・オン・チップ)を搭載し、広い運転条件下での「レベル2+」、特定条件下での「レベル3」相当の自動運転機能を実現する計画だ。
車内空間では、生成AIを活用した対話型パーソナルエージェントの開発も進んでいる。マイクロソフトとの連携で「Azure OpenAI Service」を用いた技術を搭載し、エンターテインメント技術やクラウド連携を駆使して、モビリティの進化と新たな価値の創造を目指している。