「赤字ローカル線は廃止すべき」と言う人へ! それなら同時に「固定資産税も全額払え」と主張してもらえませんか?

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地方鉄道の赤字問題が深刻化する中、「赤字なら廃止」との声が高まる。しかし、鉄道は単なる営利企業ではなく、公共インフラとしての重要な役割を果たしている。税制優遇措置や地域経済への貢献を踏まえ、存続の議論は単なる収益性の問題にとどまらず、地域価値創造の視点から再考すべき時期に来ている。

鉄道の地域貢献で経済活性化

ローカル線(画像:写真AC)
ローカル線(画像:写真AC)

 鉄道の存続をどう考えるべきか。現在、各地で取り組まれているのは、

・観光資源としての活用
・駅スペースの高度利用
・デジタル技術を活用した新サービス

など、多岐にわたる事業展開によって安定した収益基盤を構築することだ。

 例えば、観光列車は収益改善の可能性が高いものとして、全国で導入が進んでいる。日本経済研究所の調査によれば、観光列車「丹後くろまつ号」の運行開始後、地域の観光消費額が2015(平成27)年の約243億円から2019年には約273億円(12%増)になった事例がある。また、駅スペースの貸し出しなどの多様な事業展開により、通勤通学の運賃収入だけに頼らない存続の試みが各地で実施されている。

 これまで鉄道の存廃は、主に利用者数や運賃収入といった直接的な指標で評価されがちだった。しかし、この視点では不十分だ。鉄道は沿線地域全体のインフラであり、地域の発展を支える基盤であるためだ。

 鉄道会社が地域の課題解決や経済活性化に積極的に関与することで、自治体や住民からの支持を得ることができる。空き家問題や過疎化対策など、地域固有の課題に鉄道会社が関わることで、新たな公共的価値を創出できる。

 過疎化対策として移住を呼びかける際、「駅がある」という条件は大きな魅力となるだろう。車を持たない若者や高齢者にとって、公共交通機関のアクセスは住居選びの重要な要素であり、駅の存在は地域の人口維持や新たな移住者獲得のカギとなる。

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