さよなら再開発? 中野サンプラザ「事業費46%増」、TOCビル「着工延期」 オフィス空室率増加で「負の連鎖」今後どうなる?

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急激な建築コストの上昇とオフィス需要の変化が、全国各地の再開発計画に影響を与えている。目黒区や中野区、品川区の再開発は、資材価格高騰と人手不足により延期や見直しを余儀なくされ、2030年度を目指す札幌延伸や、オフィスビルの空室率増加も経済情勢を反映。再開発の未来には、適応的再利用の新しい視点が求められている。

歴史建物再活用が生む新価値

テート・モダン(画像:写真AC)
テート・モダン(画像:写真AC)

 現在、再開発に変わる新しい都市開発のトレンドとして、世界的に注目されているのが

「アダプティブ・リユース(適応的再利用)」

だ。これは既存建物に新たな用途を与え、現代のニーズに適応させる手法で、歴史的価値の保存と経済的合理性を両立させるというものだ。

 例えばロンドンのテート・モダン美術館は、旧バンクサイド火力発電所の建物を外観保存・改修して現代美術館へ生まれ変わらせた事例で、歴史的建造物の再活用の成功例として知られている。

 日本国内でも、横浜の歴史的倉庫群を改修した複合施設ヨコハマ ハンマーヘッドは、古い倉庫群の風情を残しながらホテルやレストラン、オフィスなどの機能を盛り込み、観光スポットとして大きな成功を収めている。

 この手法を応用する形で、古いオフィスビルを大規模改修し、再利用する事例も増えている。例えば、東京・大手町にある大手町ビル(1958年竣工)では、所有者の三菱地所が建て替えではなく、大規模な改修を実施した。この大規模改修後は、古いビルゆえの柱の多さを逆手に取り、スタートアップ向けの小規模賃貸オフィスとして活かすことに成功している。

 こうした事例は、再開発がうたう利便性の向上に充分に対抗できるだけでなく、

・歴史的な街並みの保存
・環境負荷の軽減
・投資リスクの分散

という多面的な価値を生み出している。

 これまでの再開発では、利便性や将来の成長を重視するために、まずは現在の建物を残さないことが前提となってきた。しかしこれからは、現在あるものを生かして新たな価値を加えるという発想も求められることになるのではないだろうか。

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