さよなら再開発? 中野サンプラザ「事業費46%増」、TOCビル「着工延期」 オフィス空室率増加で「負の連鎖」今後どうなる?

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急激な建築コストの上昇とオフィス需要の変化が、全国各地の再開発計画に影響を与えている。目黒区や中野区、品川区の再開発は、資材価格高騰と人手不足により延期や見直しを余儀なくされ、2030年度を目指す札幌延伸や、オフィスビルの空室率増加も経済情勢を反映。再開発の未来には、適応的再利用の新しい視点が求められている。

建築費高騰で中野再開発計画見直し

NAKANOサンプラザシティ(画像:野村不動産,東急不動産,住友商事,ヒューリック,JR東日本)
NAKANOサンプラザシティ(画像:野村不動産,東急不動産,住友商事,ヒューリック,JR東日本)

 こうした問題で、もっとも注目を集めているのは、東京都中野区の中野サンプラザ跡地周辺の再開発であろう。中野区では、中野サンプラザを取り壊し、跡地に地上62階建て・高さ262mの超高層ビルと7000人収容の大ホールを含む「NAKANOサンプラザシティ」を計画していた。

 ところが、2021年の計画段階で1810億円だった事業費は2639億円に膨張(46%増)。2024年10月には、施工を担当する野村不動産を代表とする4社が、さらに900億円超のコスト増加を明らかにしたことで、計画は大幅な見直しを迫られることになった。2025年1月には、野村不動産などから、ビルをツインタワーにし、低層化。住宅区画を増やすことで収支を改善する案が提案されているが、いまだ決定を見ていない。

 このほかにも、再開発の遅延や延期、中止の報道は多い。2030年度末の北海道新幹線札幌延伸を前に2028年度に完成予定だった、札幌駅南口の再開発ビルは2年程度遅れることが決まっている。また、さいたま市内で検討されていた順天堂大学新病院計画に至っては、2024年11月に正式に中止が決まっている。

 再開発の遅延や、計画の延期・中止が相次いでいる背景には急激な建築コストの上昇がある。国土交通省の調査によれば、東京都における鉄骨造事務所の建築費水準は、2021年から2023年のわずか2年間で1.5倍に高騰。坪当たり136.7万円から204.2万円へと跳ね上がった。2011(平成23)~2016年にかけては、東日本大震災の復興需要や2014年の消費増税に伴う駆け込み需要によって建築費の上昇が見られたが、現在はより問題が深刻化している。コスト増には、

・ウクライナ情勢による資材価格高騰
・円安による輸入コスト増
・深刻な人手不足による人件費上昇

などの複合的要因が絡み合っている。いずれにしても、この上昇は短期的なものには終わりそうにはない。それゆえに、近年決定した再開発計画では「予想外の出費」となり、見直しを余儀なくされているというわけだ。

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