さよなら再開発? 中野サンプラザ「事業費46%増」、TOCビル「着工延期」 オフィス空室率増加で「負の連鎖」今後どうなる?

キーワード :
, ,
急激な建築コストの上昇とオフィス需要の変化が、全国各地の再開発計画に影響を与えている。目黒区や中野区、品川区の再開発は、資材価格高騰と人手不足により延期や見直しを余儀なくされ、2030年度を目指す札幌延伸や、オフィスビルの空室率増加も経済情勢を反映。再開発の未来には、適応的再利用の新しい視点が求められている。

TOCビル再開発延期、業界衝撃

TOCビル(画像:写真AC)
TOCビル(画像:写真AC)

 このテレワークの定着は、企業のオフィススペース需要に直接影響を与えている。感染拡大期ほどではないにせよ、一定数の従業員が週に数日はオフィスに出社しない働き方が定着したことで、企業が必要とするオフィス面積は全体的に縮小傾向しつつある。持ちビルを売却し、管理部門のみ新たに賃貸したオフィスに出社という企業も少なくない。

 こうした情勢を踏まえると、従来は定番とされてきた、

「さまざまな店舗も入居する高層オフィスビル」

を中心とした再開発計画は、時代遅れとなり需要予測の見直しを余儀なくされている。前述の中野サンプラザ跡地再開発で、大幅な見直しが提案されているのも、こうした需要の変化を踏まえたものといえるだろう。

 なかでも各地の再開発計画に衝撃を与えたのが、東京都品川区にあるTOCビル(東京卸売センタービル)の再開発見直しだ。1970(昭和45)年に竣工したこのビルは、老朽化に伴い地上30階建ての新ビルへの建て替えを決定し、着工準備が進んでいた。ところが、当初の2023年春の着工は延期。2024年3月末には、ようやく着工に向けて閉館したものの、直後に一転して建て替え延期を決定。現ビルの検査・メンテナンスを行った上で2024年9月頃から賃貸・催事事業を再開することになった。

 理由は、建築費の高騰とオフィス市況の不透明さだ。このビルの場合、計画を完全に中止したわけではない。あくまで延期であり、2033年頃の着工予定だという。とはいえ、TOCビルの判断は、需要を見込んで進められていた都心の再開発に一石を投じることになっている。

 現在、多くの再開発事業が頓挫しかけている現状を見る中で、大規模再開発ではなく、既存建物の改修による利用は、事業リスクを加味した上での当然の判断としてあり得るのだ。

全てのコメントを見る