なぜ地方政治家は「交通問題」にダンマリ決め込むのか? 高齢化社会で深刻化する移動格差! 公約集から読み解く“不都合な真実”とは
選挙サイクルと公共投資のジレンマ

筆者が公共交通の講演会やシンポジウムに登壇すると、一般市民から
「地域の交通を便利にするにはどうすればいいのか」
「なぜ地域の交通はなかなか変わらないのか」
「目に見える効果が得られにくいのはなぜか」
といった質問を受けることが多い。政治家が同席する場では、
「公約に掲げれば票になるかもしれない」
と、意地悪な問いかけをすることもある。その際、ある政治家が
「交通政策は短期間での効果測定が難しく、目先の票にはつながりにくい」
と発言し、議論が盛り上がったことがある。
確かに、交通インフラの整備には時間がかかる。道路や鉄道の建設を政策的に誘導しても、完成までに数年を要し、経済的な効果や生活者のウェルビーイングの向上などの評価も短期間では十分なデータが得られない。地方政治では、選挙のサイクルが4年と短く、選挙前に政策の成果が明確に示せなければ、次の当選が危うくなるという現実がある。
本稿を執筆するにあたり、知人の地方政治家と改めて意見交換をした。彼は、公共交通と同様に、有権者の関心が高いにもかかわらず公約で扱われにくい分野として「教育」を挙げた。
その理由は、社会保障費改革のように即時的な成果が見えにくく、教育の本当の効果が現れるのは子どもが大人になる頃だからだという。近い選挙で票につながるのは、「政治とカネの問題」「経済政策」「子ども・子育て政策」「社会保障」「外交・安全保障」「憲法改正」「ジェンダー」などであり、マスコミもこうした枠組みで政策を評価する。そのため、交通や教育のようにニーズが高くても長期的な視点が求められる政策は、公約集のなかで目立ちにくくなるのが実情だ。
こうした状況を踏まえると、最終的には業界団体が主体となって政治家を輩出し、政策実現を目指すしかないという結論に至る。