信号機なしの横断歩道、「お辞儀」は必要? それとも単なる同調圧力? JAF調査が示す47%の車両が停止すらしない現実、交通マナーの現在地を探る

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信号機のない横断歩道での歩行者のお辞儀は、単なるマナーにとどまらず、交通法規や社会的背景を反映した現象だ。日本自動車連盟の調査によると、実際に53%の車両が停止せず、歩行者が「感謝」を示す文化が生まれた。だが、この「お辞儀文化」には意識改革の余地があり、理想的な交通環境への道を模索する必要がある。

法律無視の現実、86.2%が指摘

信号のない横断歩道(画像:写真AC)
信号のない横断歩道(画像:写真AC)

 まず、法律上のルールを確認しよう。

 道路交通法では、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいる場合、車両は必ず一時停止しなければならないと定められている。これは義務であり、ドライバーの「好意」ではない。したがって、歩行者がお辞儀をしなくても、ドライバーは止まらなければならないし、歩行者も遠慮する必要はない。

 しかし、現実にはこのルールが守られていないことが多い。日本自動車連盟(JAF)が2016年に実施した交通マナーに関するアンケート調査では、信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしているのに一時停止しない車が多いと感じる人が

「86.2%」

に達している(「とても思う」が43.7%、「やや思う」が42.5%)。この結果から、法規があっても現実の交通環境では必ずしも機能していないことがわかる。

 また、JAFが毎年実施している「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」の最新データ(2024年11月発表)によると、全国平均で

「53.0%」

の車両が横断歩道で停止し、歩行者に道を譲っているという結果が得られた。この数字は2018年の8.6%から着実に改善してきたが、依然として約半数の車両が停止しないという現状がある。

このような状況で、歩行者が「止まってくれてありがとう」とお辞儀をする文化が生まれたのは、ある意味で合理的だと言える。なぜなら、ドライバーに「止まってくれることが当然である」という認識が浸透していないため、歩行者は自衛のために「道を譲ってもらう」という態度を取らざるを得ないからだ。

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