バス運転手不足は「給与改善」だけでは解決しない? 横浜市の引き上げが巻き起こす人材流出、公営vs民間の待遇格差の行方とは

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バス業界の人手不足が深刻化し、待遇改善が進む中、給与引き上げは短期的な人材確保には効果があるものの、業界全体の持続可能性には限界がある。公営・民間の格差是正や効率的な運行システム、職業魅力向上が必要不可欠であり、業界全体の再構築が求められている。

バス業界の構造的課題

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 全国の路線バス業界では、依然として深刻な人手不足が続いている。2024年問題による時間外労働の上限規制や、高齢化が進むドライバーの大量退職が相まって、多くの事業者は減便を余儀なくされた。このような状況を受けて、バス事業者は採用強化を図るため、待遇改善に取り組んでおり、各地で給与引き上げが進んでいる。

 横浜市交通局では、新卒ドライバーの初任給を2万円以上引き上げ、住宅補助を年間36万円から60万円に増額した。さらに、年齢制限を49歳から60歳へ緩和し、採用試験を簡素化するなどの施策を実施し、人材確保の動きが加速している。

 しかし、給与改善による確保には“副作用”も見られる。公営バスと民間バスの待遇格差が広がり、転職が相次ぐことで民間事業者はさらなる人手不足に直面している。また、運賃収入だけでは賃上げ分を補えないため、自治体からの補助金や運賃値上げが利用者に転嫁される可能性も否定できない。

 果たして、給与改善はバス業界の構造的問題を解決するのだろうか。それとも、別の課題を生み出すことになるのだろうか。

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