バス運転手不足は「給与改善」だけでは解決しない? 横浜市の引き上げが巻き起こす人材流出、公営vs民間の待遇格差の行方とは

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バス業界の人手不足が深刻化し、待遇改善が進む中、給与引き上げは短期的な人材確保には効果があるものの、業界全体の持続可能性には限界がある。公営・民間の格差是正や効率的な運行システム、職業魅力向上が必要不可欠であり、業界全体の再構築が求められている。

求められる地域別政策

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 給与改善は必要だが、それだけでは問題を解決することはできない。「賃上げが問題を生む」といった批判は短絡的であり、適正な労働対価の支払いは欠かせない。筆者は、次のようなバランスの取れた解決策を提案する。

 まず、地域ごとの公共交通政策の再構築が必要だ。全国一律で賃上げを進めるのではなく、各地域の交通事情に応じた柔軟な政策が求められる。特に、民間バス事業者が多くを担っている地域では、自治体が支援策を講じ、公営・民間の格差を是正することが重要となる。

 次に、運賃政策の見直しが求められる。人件費の上昇に伴う運賃の値上げは避けられないが、利用者負担を抑えるために定期券の補助制度や時間帯別運賃の導入など、工夫の余地は十分にある。

 最後に、労働環境の抜本的な改革が不可欠だ。給与改善と並行して、労働時間の適正化や勤務シフトの改善を進めることで、業界の魅力を高める必要がある。特に、若年層がバスドライバーという職業を目指しやすくするための制度設計が求められる。

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